パナソニックの12万円の扇風機は中途半端

 2つめは、支柱部分にウォールナット材を用いたパナソニックの扇風機「RINTO(リント)」(型番:F-CWP3000)。オープン価格ですが、市場想定価格は12万円とか。これはまず、アナログ感やナチュラルっぽさを家電に取り入れる、質感にコストをかける志がいい。形状を工夫した7枚羽でなめらかな風を送るとのことで、扇風機の本来機能を追求しているのも正しい考え方だと思います。

パナソニックの支柱部分にウォールナット材を用いた扇風機「RINTO(リント)」
パナソニックの支柱部分にウォールナット材を用いた扇風機「RINTO(リント)」

 ただ、せっかくこだわったデザインがやや中途半端なようにも見えます。まず、こんなに扇風機らしい扇風機の形にする必要があったのかどうか。コンセプトに合わせて形状から見直したほうが、感動を生む製品になったと思います。ダイソンなどは、既存製品の流れを踏襲することなく、独自技術が生きる新しい形状を編み出していますよね。それに比べると、せっかく新しいコンセプトの製品を、他の製品とよく似た形状で送り出してしまうのはもったいないと感じました。

 それから、土台部分。黒ベースに白でマークを表したタッチボタンが並んでいて、個人的にはいかにも家電という印象を受けます。ボタンが付いた土台部分は操作するたびに見る個所なので、素材にはこだわるべきです。土台もウォールナットにすれば、見た目に品が良かったと思うし、手触りも格段に上がったのではないでしょうか。

 パナソニックは、京都の伝統工芸後継者によるクリエイティブユニット「GO ON」とのコラボプロジェクトも展開していて、そこでは妥協なくこだわり抜いた製品を作っています。茶筒形のスピーカー、IH対応の木製の燗徳利など、どれも非常に良い出来です。ただ、こちらは販売しないんですよね。

「GO ON」とのコラボプロジェクトは、茶筒型のスピーカーなどこだわり抜いた製品が並ぶ(画像は「GO ON × Panasonic Design」のウェブサイトから)
「GO ON」とのコラボプロジェクトは、茶筒型のスピーカーなどこだわり抜いた製品が並ぶ(画像は「GO ON × Panasonic Design」のウェブサイトから)

 RINTOのような量産品ではコストとこだわりのバランスを考える必要があり、販売予定のないコンセプトシリーズと同様にはいかないメーカーの事情は理解できます。ただ、GO ONなどでやればできることはわかっているので、余計にRINTOは中途半端に感じてしまう。こだわった製品を実際に販売しようとすると、「この価格では絶対売れない」と思うような高額になるんでしょうが、それでももう一つ勇気を出して壁を越えてほしかったですね。