アマゾンが培ってきた創造的知性

 アマゾンの取り扱い製品の手広さには、品ぞろえの良さで売り上げを伸ばすといった直接的な効果以外にも利点があると僕は思っています。この連載では、皆さんに「創造的知性」を身に着けてもらいたいとくり返しお伝えしてきました。創造的知性を養うプロセスは、観察、質問(仮説を立てたり自問自答したりする)、実験、意見交換、関連づける、この5つであるという話もしました。アマゾンは企業として、この“関連づける”力が伸びてきた気がします。

 これは経験則ですが、関連づける力を高めるには、あまり頭の中を整理しすぎないほうがいいんです。気になったことを、頭の中のどこかにきっちり収めてしまうと、何かあったときに取り出して関連づけることがしにくいんですよね。ひらめかない。だから、ひとたび課題を持ったら、頭の中でうっすらとでもいいので考え続けることが大切です。情報や課題を死蔵させないで、アクティブな状態にしておく。そうすれば新しい情報や課題が入ってきたときに、ぱっと結びついたりします。

 アマゾンは、ありとあらゆるものをECの対象とし、物流はじめ、さまざまなサービスに取り組んできました。そうやって“なんでも”やってきたことで、何かと何かを関連づけて新しいものを生み出す土壌を、無意識にでも築いてきたんじゃないかと思います。

ブランド戦略なき会社のブランド力

 この記事の冒頭で、アマゾンはマーケティング、ブランディングに成功していると書きましたが、アマゾンは実は狭義の「ブランド戦略」を持たない会社だと思います。ここでいうブランド戦略は、自分たちの会社や製品系列が外からどのように見られたいかを決めて、それに近づけるための施策を考えるようなことです。

 アマゾンは、そこにあまり注意を払っていない気がします。実質本位といいますか。商品送付用の段ボール一つ取ってもそうですよね。段ボールに黒文字のロゴ。シンプルさを追求したデザインというよりは、コストとの兼ね合いでああなった感があります。コスト効率のため、箱の種類が絞られているから、(段ボール内に空きが生じて)空気も一緒に運んでくるのは難点ですが(笑)。

 アマゾンが企業理念としているのは、よく知られる通り、「地球上で最も豊富な品ぞろえ」と「地球上で最も顧客を大切にする」の2つです。自前であそこまでの物流網を構えているのも、顧客中心主義の表れです。最近はイメージ重視のテレビCMもやっていますが、元来、あの会社はイメージのために何かする体質ではないのだと思います。それよりも、ユーザー自身が同社のサービスを利用した体験が、結果的にアマゾンのイメージやブランドを形作っているのです。

 ウォルト・ディズニー・ジャパンに勤めていたときに聞いた話ですが、「Disney」というロゴを見ると、まだ字が読めない小さな子どもでも機嫌がよくなったりするそうです。文字をパターンとして認識して、自分の中の楽しかった体験と条件反射的に結びつけているんでしょう。あのレベルには及びませんが、ユーザーの体験がブランドにつながっているという意味では、アマゾンに関しても近いことが起こり始めているように最近は感じます。

(構成/赤坂麻実)

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2017年11月6日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています