こうならよかった、新型iPhone

 僕ならどうしたいか。まずアイコンがずらずら並ぶ画面の見た目やユーザーインタフェースに手をつけます。例えば、今回搭載した人工知能(AI)を使って、そのユーザーがその時間帯によく使うアプリのアイコンだけを画面上に並べるようにしたら、見た目もすっきりするし、使いやすいと思いませんか。ほかのアプリを使いたいときは特定のアイコンを押せばアプリ一覧を表示して選べるような形にすればいい。

前刀氏の私物である、初代iPhone(奥)とiPhone 4s(手前)。前刀氏は「iPhone 4sは筐体、デザインとも黄金比。僕は一番気に入っている」という
前刀氏の私物である、初代iPhone(奥)とiPhone 4s(手前)。前刀氏は「iPhone 4sは筐体、デザインとも黄金比。僕は一番気に入っている」という

 今年12月に米国などで発売予定のAI搭載スピーカー「HomePod」との連携も考えられます。iPhone XからHomePodを遠隔操作できるとか、iPhone Xに電話がかかってきたら、音楽再生中のHomePodが自動で音量を下げるとか、ユーザーが「便利だな」「気が利いているな」と思うような連携機能があるとよかったと思います。

 僕がここに挙げたような機能は、現時点では、技術的に困難または不可能なことかもしれません。でも、アップルには、今ある技術の延長線上で単にスペックを上げた製品を作るのではなく、これまでにない素敵なことが出来る新しい製品として、iPhoneの新たなフラグシップ機を開発してもらいたかった。iPhone Xは確かに上質の製品ではあるけれど、ユーザーの予想や期待を超えて感動を呼ぶ製品にはならなかった。そのことが僕は残念です。

Apple Watchは従来機種と別次元へ

 一方、iPhone Xと同時発表したスマートウォッチの「Apple Watch Series 3」は、従来機種の改良にはとどまらない製品になりました。LTE通信機能を備えたことで、単体で通話ができるようになっています。アプリが豊富なiOSのスマートウォッチで、単体での通話機能を搭載したら、飛躍的に便利になりますよね。これなら、Apple Watchだけ腕に巻いて出かけてみたいと思うし、そうなると利用シーンがまず変わって、ひいてはライフスタイルにも変化が起きそうです。

「Apple Watch Series 3」は「新しい価値を提供する製品」(前刀氏)
「Apple Watch Series 3」は「新しい価値を提供する製品」(前刀氏)

 細かいことを言えば、Cellularモデルはサイドの「デジタルクラウン」がなぜか赤かったり、バンドのデザインも冴えないものが多かったり、気になる部分はあります。今回、エルメスなどとのコラボモデルも発表していますが、ハイブランドのデザインを取り入れたいなら、AppleWatchとして売らなくてもいいようにも思います。バンドとバンドに合わせたデザインの文字盤(のダウンロードキー)をセットにして別売すればいいののではないでしょうか。

 それでも、iPhoneの周辺機器ではなくなったApple Watchは実に魅力的。これまでの自社製品や競合他社製品と一線を画す、新しい価値をユーザーに提供する製品です。僕はいつでもそれを求めたい。特にアップルには、そんな製品を作る企業であり続けてほしいのです。僕は文句を言いながらもiPhone XとApple Watch Series 3を両方買うことになりそうですが(笑)、この2つの製品が持つ意義は、上述の通り、実はかなり違っています。かえすがえすも、それが少し寂しいですね。

(構成/赤坂麻実)

当記事は日経トレンディネットに連載していたものを再掲載しました。初出は2017年9月22日です。記事の内容は執筆時点の情報に基づいています