高級テレビなのに手元のリモコンが残念

 ブラビア A1シリーズはディスプレーを振動させることで、テレビの画面から直接、音を出力できるという「アコースティック サーフェス」技術がウリ。当初は「スピーカー不要」と宣伝していましたが、筐体の裏には大きなスタンドが付いていて、実はそこにウーハーが格納されているので、このうたい文句はあまり正確でないですね。

 デザインは一見、とてもスタイリッシュ。正面から見ると、ディスプレーしか見えず、全面に映像が表示されます。製品を紹介するウェブページでは、A1シリーズを部屋に置くと、こんなに魅力的な空間が広がるよ、と想像を喚起するような写真も用意されています。ただ、先述の通り、裏には結構な存在感のスタンドがあるんです。

ソニーの有機ELテレビ「ブラビア A1シリーズ」(写真/湯浅英夫)
ソニーの有機ELテレビ「ブラビア A1シリーズ」(写真/湯浅英夫)
背面に大きなスタンドが付いている(写真/湯浅英夫)
背面に大きなスタンドが付いている(写真/湯浅英夫)

 スタンド以上に僕が残念に思ったのはリモコンです。ボタンが山のようにある汎用リモコンが採用されています。せっかくかっこいいA1を部屋に置いたところで、ユーザーの手元、目の前にあるのはデザインに工夫がないリモコンです。まさに「ラストワンインチ」で台無しになっているように思います。

 メーカーとして、汎用リモコンを採用してコストを抑えたいという理由があるのかもしれません。開発の流れから、リモコンのデザインや仕様を検討するステップが抜け落ちているであろうことも想像がつきます。新しいインターフェースを提示すると、ユーザーが戸惑うかもしれないという考えもあるようです。

 でも、そこはリモコンまでこだわってほしい。65インチで80万円ほどするテレビです。低価格のモデルと大差ない汎用リモコンでは不釣り合いだし、コストを価格に上乗せして80万円が83万円になっても大差ありません。5万円のテレビがリモコンにこだわったせいで8万円になったら競争力を失うでしょうが、この商品を買う人なら、リモコンへの投資を無駄な出費とは思わないはずです。新しいインターフェースにユーザーが戸惑うというけれど、テレビで新しい体験を提示して感動してもらおうというときに、使い慣れたインターフェースに固執するのもおかしな話です。

 過去の話をしても仕方がないかもしれませんが、大賀典雄社長の時代だったら、こんなリモコンは通らなかったんじゃないかな。大賀さんはさえないモックアップをエンジニアの目の前で投げ捨てていましたからね。華々しく発表する有機ELテレビのリモコンがこれです、なんて差し出したら、ぶん投げられて画面に刺さっていたんじゃないかと思う(笑)。