2018年11月に米アップルが発売した新「iPad Pro」。一見、従来モデルとあまり変わらないように見えるが、ユーザーインターフェース(UI)が進化していると前刀禎明氏は語る。「UIが使う人のクリエイティビティーを加速させる」というその心は?

 僕が新iPad Proを使い始めて1カ月ほどになります。2018年11月7日に発売されたにもかかわらず、使い始めたのは12月初旬から。というのも、僕が選んだのは、12.9インチのディスプレーと1TBのメモリーを搭載したモデルなのですが、どうやら用意した出荷量を需要が上回ったようで、なかなか届かなかったのです。注文後、最初に届いたのはなんとスタイラスペンの「Apple Pencil」。次に本体が届き、最後に純正キーボードの「Smart Keyboard Folio」が到着しました。

 この5年ほど、僕は「iPad Air」(第1世代、画面サイズが9.7インチ)を愛用していました。外出時はそれに加えて、ノートパソコンのMacBook ProとスマートフォンのiPhoneも携帯します。

 今回、新しいiPadを購入しようと思ったのは、大画面化に伴ってiPhoneの使い方が変わってきたから。iPhoneをプレゼン資料作成などにも使うようになって、僕にとってはiPhone 7 Plusが“iPad nano”というような存在になってきました。そうなると、iPadはもう少し画面が大きくてメモリー容量も十分なものにして、MacBook Proを代替したいと思うようになったんです。第1世代のiPad Proはメモリー容量が256GBまででしたが、今回は1TBまでラインアップに加わったので、これは買いだと思いました。

 最近はMacBook Proを持ち歩かず、ほぼiPad Proだけを仕事に使っていますが、非常に快適です。秀逸なのは、なんといってもユーザーインターフェース(UI)。キーボードとタッチパネルのどちらでも入力できますし、どちらか一方でしか使えない機能もほぼないので、操作の自由度が高いのです。入力内容は同じでも、画面をタッチして操作したいときと、キーボードから操作したいときがあります。僕の場合はそこに法則性がないので、そのときの気分で使い分けています。

 iPad Proの前モデルもキーボードとタッチパネルで入力できましたが、新iPad Pro用に改良されたSmart Keyboard Folioでは、UIの良さが一層引き立ったと思います。従来のiPad Pro用のFolioは主に側面の端子でiPad Proと接着していましたが、新しいFolioでは背面の磁石でくっつきます。これによって、ノートパソコン風に横置きしたときに、画面の角度を2段階で調整できるようになりました。机やイスの高さやユーザーの姿勢が変わっても、キーボードとタッチパネルを“両刀遣い”しやすい。キーボードで文字入力していた次の瞬間には、タッチパネルにひょいと触れてアプリを操作できます。まさに縦横無尽。操作が3Dになったというか、頭の中の情報を目の前に取り出して、実際に手を動かして創っているような感覚になるのです

 このように、デバイスをシームレスに操作できるというのは、実は非常に重要なことです。UIが思考を妨げることがないので、アイデアを出すことに集中できます。そういう意味で、デバイスが生産性を高め、創造性を大いに刺激してくれると感じます。

次はSiriの進化でUI革命を

 OSが新たにiOS12になったことで、起動中のアプリを一覧できるようにする(Appスイッチャーを開く)操作など、やりにくい部分もあります。マルチタスク(Slide Over)、マルチウィンドウ(Split View)の表示・操作も覚えるまでは煩雑です。ただ、これは慣れの問題でしょう。それよりも、マルチタスク機能にもっと多くのアプリが対応してくれたら、利便性がさらに上がるだろうという期待のほうが大きいです。

 ちなみに、Apple Pencilは、今のところあまり使っていません。ペン型の入力装置をキーボードなどと併用すると、操作の合間にペンを持つ/放すというアクションがどうしても加わるので、指より“遅い”感覚になりがち。直感的にスイスイ進めたいとき、シームレスとは言えないんですよね。余談ですが、スティーブ(・ジョブズ)もタッチペンは嫌いでした。iPodやiPhoneで指先での操作にこだわったのはそれが理由です。

 僕としては、タッチペンより音声入力UIの改善に力を入れてもらいたいですね。音声アシスタントの「Siri」はまだまだ未熟で、使おうとするとストレスが溜まってしまう。現状まったく使っていませんし、MacBook ProやiPhoneでたまに誤って立ち上がってくるのが正直わずらわしいぐらいです。今後、音声認識の精度が上がってSiri自体ももっと賢くなれば、iPadと会話するように入力できて、この上なく快適だろうと思います。

キーボードとタッチパネルをシームレスに操作できることが重要
キーボードとタッチパネルをシームレスに操作できることが重要

1TBのタブレット端末という最強ローカル環境

 UI以外では、手にしたときの“持ちごたえ”も気に入っています。手にずっしりくる感覚(631g)は、重量は違っても僕の好きな「iPhone 4S」に似ている気がします。それでいて、MacBook Pro(13インチで1.37kg、15インチで1.83kg)に比べたら半分以下と軽い。

 持ち運びやすいのに機能・性能は充実していて、僕が使う分にはMacBook Proを代替できる。カフェなどで使っていてもMacBook Proほど仰々しくないのもありがたいですね。欲をいえば、背面に型押し風の加工でロゴマークが入っていてもよかったかもしれません。外観は、Smart Keyboard Folioが本体背面を全面覆う設計になっていて、背面がフラットになるのも好印象です。

 スピーカーの音質も上々だと思います。僕がこれまで使っていたiPad Airからして、ちゃちなBluetoothスピーカーを使うぐらいなら、iPad本体から鳴らしたほうがいいぐらいの水準にはありましたが、新iPad Proはなおいい。きょう体の側面に左右合計4個のスピーカーがついています。これは第2世代からですが、出力やアルゴリズムなどは、前機種より改善されているのではないでしょうか。

 メモリー容量が1TBの機種を選べるようになったこともよかったです。前回の記事で取り上げましたが、クラウドからローカルへの揺り戻しは必ず来るはずです。昨年、ソフトバンクの携帯電話サービスに大規模な通信障害が起きて、ローカルにデータを持つことの重要性を痛感した人も少なくないのではないでしょうか。障害発生時でなくとも、一つ一つのアプリやファイルが大容量化する傾向にある中、データ通信量を多く消費したくないですよね。

 キーボードとタッチパネルのシームレスな操作や大容量の内蔵メモリーによって、プレゼンの資料を作ったりアイデアをまとめたりするのにも、不便を感じなくなりました。たかがデバイスの性能と思う人もいるかもしれませんが、道具の進化は思考の進化に無関係ではありません。道具は人間の思考や活動をサポートするもの。だからこそ実態にあった進化が重要なのです。

(構成/赤坂麻実)