データ寡占、アマゾンは今後ますます脅威に

 このようにプロダクトの差異化にAIなどのソフトウエアが重要な意味を持つ現在、日本のメーカーの立場はかなり危ういものになりつつあることを、改めて感じてしまいます。各社、IoTやAIを売りにした製品を積極的に投入していますが、その製品に使われているAI基盤技術は「Googleアシスタント」だったりする。グーグルのAIは活用されればされるほど、その機能を向上させるためのデータをどんどん吸い上げていきます。その“端末”を日本メーカーが盛んに売っているという構図です。

 米アマゾン・ドット・コムの“データ包囲網”も、末恐ろしいものがあります。アマゾンもグーグル同様、AIアシスタント「Alexa(アレクサ)」を展開しています。さらにグーグルにない強みとして、アマゾンは実店舗を構えています。レジなし食品小売店の「Amazon Go」です。まだまだ店舗数は少ないですが、Amazon Goを使って消費者の購買行動をつぶさに観察できるのは、非常に大きなアドバンテージだと思います。

「Amazon Go」サンフランシスコ店の店内。天井には人用カメラが設置されている
「Amazon Go」サンフランシスコ店の店内。天井には人用カメラが設置されている

 それというのも、音声を中心としたAIアシスタントとのやりとりは言語化されたものです。しかし、Amazon Goは購買シーンに限定されるとはいえ、ユーザーの視線の動きから何から、非言語的で無意識の、感覚的な人間のふるまいをデータとして蓄積できます。アマゾンの既存事業にも生かせるでしょうし、活用の仕方によっては新しいインターフェースやサービスを生み出す一助になる。実店舗の新たな活用法です。

 先にローカルにデータを持つことへの揺り戻しの話をしましたが、実店舗も再評価されるのではと思っています。例えば2018年、米老舗玩具店のFAOシュワルツがロックフェラーセンターに旗艦店を開店しました。5番街にあった店舗を15年に閉鎖して以来、3年ぶりのニューヨーク復活です。こういうことは、これから世界中で起きるのではないでしょうか。手元のデバイスから何でもオンラインで注文して買える時代だからこそ、実店舗で商品に囲まれ、手に取ったり試してみたりして商品を選ぶ“体験”の価値は、かえって高まってくる。そんな揺り戻しの波が来たとき、実店舗での購買行動データを持つアマゾンは、競合に対して優位に立てるのではと考えています。

 なお、アマゾンは18年11月、商品のレコメンド機能など自社で使っているAI技術を一部、サービス化して外販すると発表しました。Googleアシスタント同様、他社がこの技術を活用すれば、今後ますます多くのデータがアマゾンに集まることになりそうです。

 ちなみに米アップルもAIアシスタント「Siri」を積極展開しています。最近はAI関連のスタートアップ(米Silk Labs社)を買収したとも伝えられました。サービス部門の売り上げは今のところ全社の2割未満で、売り上げの大半を「iPhone」シリーズに頼っていますが、ハード依存を解消する方向に舵(かじ)を切っています。

 日本企業も、いつまでも単なる家電メーカー、機器メーカーでいていいのか、本当に今やるべきことは何なのか、再考すべきときに来ています。“GAFA”のプラットフォームにデータを吸い上げられるだけの“端末”メーカーの立場から早急に脱却してくれることを願うばかりです。

(構成/赤坂麻実)