大手IT企業が覇権を競うQRコード決済サービス。各社は単なる決済手数料を得るビジネスではなく、消費者の購買データを活用した各種金融サービスを展開することを見据え、小売店の決済手数料を0円にすることで陣取り合戦を急ぐ。メルカリも2017年12月に子会社メルペイを設立して、市場参入の機会をうかがっているが、18年8月9日に開催した決算説明の記者会見で手数料0円競争とは一線を画す考えを明確にした。

メルカリ 2018年6月期 通期決算説明会に登壇した山田進太郞会長兼CEO(最高経営責任者)
メルカリ 2018年6月期 通期決算説明会に登壇した山田進太郞会長兼CEO(最高経営責任者)

 「モバイル決済市場において、加盟店側の手数料率で一定の競争力を求められるが、当社は手数料勝負ではやっていない。最大の特徴は入金サイド。毎月アクティブに300億円が(サービス利用者の手元に)入ってくる。既存の決済市場とは違う新しい財布になる」

 上場後、初めての決算発表会に登壇したメルカリの小泉文明社長は、開始に向けて準備を進めるモバイル決済サービス「メルペイ」において、手数料競争とは一線を引くことを示唆した。

 また、創業者の山田進太郞会長兼CEO(最高経営責任者)は自らマイクを取り、これに付け加える形で「サービスの開発力が強み。(フリーマーケットアプリ『メルカリ』で得た資金を)オンライン、オフラインの両方でスムーズに使える世界を実現する。それがクチコミで自然と広がるような、良いサービスの開発に注力したい」と説明。メルカリ流のユーザー体験を構築することで他社との差異化を図る意向を示した。

メルカリ経済圏、オフラインに拡大

 メルカリはサービスのID、メルカリ上の販売収益を管理する「ウォレット」、売買によるユーザー同士の評価情報を軸とした、独自のエコシステムの構築を中長期的な戦略に掲げる。メルカリの利用者間では、商品の販売で得た資金を使って、メルカリで新しい商品を購入するといった、キャッシュレス文化ができあがっている。この文化を他のオンラインサービスやオフラインに広げる。具体的にはメルカリのウォレットにためた資金を他のECサービスや、オフラインでの購買でも使えるようにする。これによりメルカリ経済圏の拡大を狙う。

 7月2日にはメルペイの加盟店開拓を担う営業会社メルペイコネクトを設立。オフラインでメルペイを利用できる店舗の開拓に本腰を入れる。併せて、子会社のソウゾウが展開している複数のサービスを終了し、注力分野であるメルペイなどに人材を再配置するなど、開発を強化している。

 メルカリの18年6月期の流通総額は前年度比で48.1%増の3704億円。売上高は同62.0%増の357億円となった。国内の月間利用者数も前年同月比で27.3%増の1075万人と順調に成長を続けている。一方で、新規事業や投資がかさみ営業損益は44億2200万円となったものの、投資の手は緩めない。人材の採用、米国を中心とした海外事業の成長、メルペイのサービス開始に向けたプロモーションの強化など、引き続き中長期的な成長を見据えた投資を続ける方針だ。

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