ショッピング取扱高は前年比31%増の急成長

 そこで後発のヤフーが、先行するLINEや楽天などと伍して競争するためのもう1つの武器があるという。2本目の矢が、「Yahoo!ウォレットのQRコード決済サービスを導入してもらえれば、単なる決済ソリューションや集客ソリューションにとどまらず、データを収集・分析するマーケティングソリューションとしても機能する」(谷田氏)という、うたい文句である。

 例えば、Yahoo! JAPANアプリやYahoo!地図アプリを利用中の人が、ヤフーのQRコード決済サービス導入店の近くを通ったら、当該小売店でQRコード決済に限り使える割引クーポンがプッシュ通知で表示される。また、小売店がQRコード決済を導入した際に、そのエリア内でYahoo!ショッピングやヤフオク!をよく利用する人に、好みに合わせた情報を配信して来店を促す。こういった、いわゆるレコメンドサービスの展開を考えているのだ。

 ちなみにヤフーの研究機関であるYahoo! JAPAN研究所では、機械学習に代表されるAI(人工知能)の活用で、スマートフォンのプッシュ通知の開封率を上げる実験を約68万人のユーザーを対象に実施し、開封までの時間が平均49.7%短縮され、開封数が最大約5.5%上がる成果を得ている。その論文は著名なカンファレンスでトップ3に入り、世界的に評価されている(関連記事「ヤフーが連携戦略で研究論文数を倍増、他の企業との共同研究も検討」)。こうしたビッグデータとAI技術を生かしたレコメンドが小売店開拓のカギを握る。

ヤフーはユーザーの購買データなどを使ってリアル店でもレコメンドサービスを展開する考え
ヤフーはユーザーの購買データなどを使ってリアル店でもレコメンドサービスを展開する考え

 「ヤフーはもともと、ネット広告をコンテンツと考え、このコンテンツを適切なタイミングと適切な手法でネット上のユーザーに届けることで成長してきた。これは広義のレコメンドサービスと言ってよい。今回のYahoo!ウォレットを使ったモバイルペイメントサービスは、決済だけにとどまらず、この延長線上にも位置付けられる。リアルな小売店を利用するユーザーにも同様にレコメンドサービスを展開していきたい。約4000万人のユーザーは既にいる。このユーザーに情報を伝える手段もある。後は、何をどう伝えるかを今設計しているところだ」と谷田氏は語る。

 17年度のヤフーのショッピング事業の取扱高は6276億円、前年同期比31%増の伸びを見せている。こうしたレコメンドサービスなどの積極的展開が貢献しているという。

 さらにヤフーは、その先も見据えている。小売店が得る「Yahoo!ウォレットを使ってユーザーが何を買ったかというデータ」と、ヤフーが得る「Yahoo!ウォレットを使って誰がどこで買ったかというデータ」をDMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)に収容し、突き合わせれば、Yahoo!ウォレットのユーザーに対して、さらに精緻なマーケティングを展開できる可能性が高まる。谷田氏は、「Yahoo!ウォレットでも使っているYahoo! JAPAN IDを軸にして、ユーザーのデータをまとめるDMPサービスも考えていきたい」と展望を話す。