個人間送金を利用の呼び水に

 もっとも、QRコード決済サービスに注力する競合他社も、LINE同様、決済手数料の引き下げやポイント付与といった施策を展開してくる可能性はある。その場合、LINE Payの強みはどこにあるのか──。LINE Payの長福久弘取締役COO(最高執行責任者)は、「日本で最大のコミュニケーションツールであるLINEの上で展開されるサービスというのが最大の強み」と話す。

 実際、LINE Payは、競合他社と比べると、個人間送金サービスをかなり重視する。他社の多くのサービスがクレジットカードとひも付けて決済する仕組みになっているのに対し、LINE Payが原則クレジットカードではなく、登録済みの銀行口座経由や現金によるチャージで決済する仕組みを取る。これは個人間送金を簡単にできるようにするためだ。個人間送金の応用として、飲み会などの会計を割り勘する際も、全員がLINE Payを使っていれば簡単にできる。

 「飲み会の席でLINE Payを使っていないユーザーが1人だけいたような場合、『早く使えよ』と自然に加入が促進される。これはLINE Payならではのマーケティングになる。それに、個人間送金を当たり前に使うユーザーは、LINE Payの中に一定の残高をチャージするようになる。この残高をリアルの小売店で利用してもらえれば、LINE Payによる決済の頻度も増やせる。ユーザーに常に利用してもらえる可能性が最も高いのがLINE Payだ」と長福氏は強調する。

 18年6~7月にかけては、LINE Payを使って友だちに10円を送るだけで、ローソンやマクドナルドの商品がもらえるキャンペーンを実施し、LINE Payの個人間送金のお試し利用を促進した。

決済利用者へクーポンの配信を可能に

 小売店側にとっても、LINE Payを導入するメリットは大きい。LINE Payは現在、LINE Payで決済した来店者をリスト化して来店頻度などに応じてクーポンを配信し、再来店を促せる機能を開発中だ。一部の小売店で実験している。「年内には正式なサービスとして提供したい」(長福氏)と言う。

 実現すれば、小売店はLINE Payで決済した客に対し、1週間後、あるいは1カ月後などにLINE上でメッセージを送り、再来店を促すといった販促策が可能になる。「小売店にとって導入がコストでしかなかったキャッシュレス決済サービスが、“資産”に変わる」(長福氏)というわけだ。競合他社がこのマーケティングサービスを提供するには、メールアドレスの登録などLINE Payに比べて一手間余計にかかる可能性が高い。QRコード決済サービスの導入先に迷う小売店にとって、このマーケティングサービスはLINE Payをかなり優位に立たせそうだ。

 もっとも、順風満帆に見えるLINE PayのQRコード決済サービスだが、キャッシュレス社会到来への切り札となり得るかというと、課題がないわけではない。QUICPayとの提携でLINE Payを利用できる小売店の数は見かけ上増えるが、そこから先、中小・零細の小売店にQRコード決済サービスを普及させる営業力があるかどうか。LINE公式アカウントと統合した「LINE@」を利用していた店舗を軸に、まずはどこまでのスピードで普及させられるかが問われる。