※日経エンタテインメント! 2018年7月号の記事を再構成

200万部発行の大ヒット作『漫画 君たちはどう生きるか』(マガジンハウス)。今作を手がけた新人マンガ家・羽賀翔一をサポートするのが、クリエイター・エージェント会社「コルク」だ。コルクの代表取締役社長であり編集者の佐渡島庸平氏は、マンガ雑誌の衰退など従来のビジネスモデルが崩壊した今、作家の価値を高め、作品をきちんと届けるには「ファンコミュニティ形成が欠かせない」と語る。昨年1月には、自身のオンラインサロン「コルクラボ」の運営も始めた。インターネット時代における作品の届け方、広げ方について聞いた。

佐渡島庸平(さどしま・ようへい):1979年生まれ。講談社週刊モーニング編集部で、『ドラゴン桜』『働きマン』などの編集を担当。12年同社を退社後、クリエイターのエージェント会社コルクを創業。作品編集、ファンコミュニティ形成などを行う
佐渡島庸平(さどしま・ようへい):1979年生まれ。講談社週刊モーニング編集部で、『ドラゴン桜』『働きマン』などの編集を担当。12年同社を退社後、クリエイターのエージェント会社コルクを創業。作品編集、ファンコミュニティ形成などを行う

 『漫画 君たちはどう生きるか』の羽賀翔一は、ずっとコルクでサポートしているマンガ家です。『ケシゴムライフ』『昼間のパパは光ってる』という2作を5年かけて作りました。羽賀君は描き上げるのがとにかく遅い。次は原作付きで学んでもらおうと考えていたときに、マガジンハウスさんから企画の相談があったのが、今作のマンガ化でした。僕のしたことは、企画にゴーサインを出したことと、羽賀君の成長を5年ぐらい待ったことだけ。作品完成後のプロモーションも、コルクは運用していません。マガジンハウスさん主導で新聞・車内広告、テレビ出演、新聞・ラジオ取材と、包括的プロモーションにお金も人も費やしてくれました。すごかったのは、100万部に到達してから、プロモーションを強化したこと。それが次の100万部を生みました。

 コンテンツの数も情報処理量も増えた今、受け手は何を選べばいいか分からない。ガイド情報もあふれているから、「圧倒的に一人勝ちのものを押さえておく」という選択になります。ヒットの可能性のあるコンテンツが年間200個生まれたとして、そのうち2~3個が宝くじに当たったように、ますます売れる時代になりました。

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