米アマゾン・ドット・コムが様々な業界に影響を与えることを総称する「アマゾンエフェクト」。米国のリテール業界は、その恐ろしさを実感しているのではないだろうか。米玩具販売大手のトイザラスは2018年6月末、米国の約700全店舗を閉店することとなり、専門店のビジネスが厳しい状況に置かれていることが再認識された。

トイザラスはアマゾンによるネット販売の攻勢だけでなく、リアル店舗でもウォルマートなどの大手との競合が激しくなっていた。ネットでの品ぞろえでアマゾン、安値攻勢でウォルマートなどのリアル店舗に攻め込まれていた。ウォルマートのような総合スーパーであれば、玩具を特売して家族連れを集客し、ついでに食品や日用品を購入してもらう戦略をとることができる。
トイザラスが破綻したのはアマゾンのようなライバルの影響だけでなく、自社の戦略のミスもあるだろう。近年は資金繰りも思わしくなかった。
玩具市場は縮小していない
スマートフォンのゲームやYouTubeなどに若年層の時間が奪われているという見方もあるが、実は玩具のマーケットは縮小していない。全米の玩具市場は米調査会社のNPDグループによると、17年に約207億ドル(約2兆2900億円)で前年比で1%増とわずかではあるが拡大している。全米玩具協会の集計によると、アウトドアやスポーツ玩具、人形などは市場の拡大が続いている。

トイザラスの米国での売上高は17年1月末に終わった期で、年71億3100万ドル(約7800億円)にも上る。これに対して、アマゾン米国における玩具の売上高は米調査会社のOne Click Retailによると、米国で45億ドル(約4900億円、17年の推定額)と半分強でしかない。トイザラスの顧客を取り込むことができれば大きく伸びる可能性があり、その動きも出ている。米メディアのブルームバーグによると、トイザラスが毎年秋に配っていたクリスマス向けの大型カタログを、今年はアマゾンが代わりに配ることを検討しているという。米国の子供たちがそれを見ながらプレゼントを選ぶのが恒例になっていたものだ。
思えば、ターニングポイントは15年以上前にあった。
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