※日経エンタテインメント! 2022年5月号の記事を再構成
MTVジャパンやユニバーサルミュージックなどで新規事業開発を担ってきた鈴木貴歩氏が、エンターテックの最新キーワードとキーパーソンを探る連載。今月は、「オーディション」アプリに迫ります。
近年、様々な形でオーディションが盛り上がりを見せています。そのなかで注目を集めているのが、オーディションエンタメアプリの「mysta」です。アイドル、モデル、俳優などのオーディションをアプリ上で定期的に開催。動画を投稿することで誰でも参加でき、審査はユーザー投票が中心となって行われています。また、メディアや事務所などともタッグを組み、テレビなどにひけをとらない大規模オーディションを開催しています。代表取締役社長の高橋秋仁氏に話を伺いました。
――現在どれくらいの数のオーディションが行われているのでしょうか?
高橋秋仁氏(以下、高橋) 毎月約30本のオーディションを開催しており、私たちがキャストと呼んでいる動画投稿をする参加者は10代~20代の女性が中心、ギフト(投げ銭)などで応援するユーザーは30代~40代の男性がコア層となっています。
最近はオーディションをやっても人が集まらないという声をよく聞くのですが、「mysta」は参加しやすい設計にしているため、毎回キャストが多く集まることが強みの1つです。動画は、歌や踊りなどのパフォーマンスに特化した短尺動画を作成して上げてもらう方式をとっています。それがライブ配信動画となると長時間になりがちで、参加するハードルが上がってしまうんですよね。またその動画は、アーカイブとして一覧で見られるようになっているため、ユーザーもキャストの実力を比較しやすく、同時にオーディションの質も担保できるようになっています。
さらにTBS、集英社、ポニーキャニオンといった様々なメディアに参画いただいていたり、ホリプロ、東宝芸能といった芸能事務所も参加しているため、オーディション合格後に、活躍の場が広がっているのも特徴です。
――昨年の「サンリオピューロランド公式アイドルオーディション」は大きく盛り上がったそうですね。
高橋 サンリオピューロランドさんの公式アイドルグループで、その後の活動も約束されているということで約1万5000人の応募がありました。事前審査を行い、最終的に動画を投稿したキャストも1000人以上にのぼりました。半年間かけて6次にまで及ぶ動画審査を行うことで、その過程でファンが生まれ、まさに昨今話題の“プロセスエコノミー”的なオーディションになったと思います。最終審査は11月にサンリオピューロランド内のホールで開催。チケットも販売しつつ、その内容を「mysta」で生配信するなど、デジタルとリアルを融合する取り組みも行いました。
一般人から主人公の声優を
――最近は声優のオーディションにも力を入れているようですね。
高橋 昨年はポニーキャニオンさんと一緒に、今年7月放送開始のアニメ『東京ミュウミュウ にゅ~』の声優アイドルオーディションを行いました。ポニーキャニオンさんの「事務所に所属している声優さんではなく、一般人の才能ある子をゼロから育てたい」という強い思いから、合格した子は主人公を演じられるという前代未聞のプロジェクトでした。約1万人の応募があり、声優オーディションとしてはかなり大規模なものとなりました。その中から選ばれた天麻ゆうきさんは、現在ポニーキャニオン系列の声優事務所「スワロウ」に所属しています。
今年1月から5月にかけて開催しているのが、美少女RPGゲーム『放置少女』の新キャラクター声優オーディション。ファンと一緒にキャラクターを作っていくというコンセプトで、『放置少女』に出てくるキャラクターになりきって自己紹介をするなどの課題が評判となっています。またオーディションをきっかけに、『放置少女』の知名度やファンが、これまで少なかった若い女性層にも拡大するという宣伝効果も生んでいます。
今後は、VTuberやVライバーといった3Dのアバターで活動する人たちのオーディションにも注力していきたいですね。また、「WEB3.0」「NFT」といった話題のキーワードも、うまくmystaに落とし込んでいければと考えています。
(構成/中桐基善)