※日経エンタテインメント!2018年11月号の記事を再構成

MTVジャパンやユニバーサルミュージックなどで、次世代の“エンタテインメント×テクノロジー”の新規事業開発を担当してきた鈴木貴歩が、エンターテックの最新キーワードとキーパーソンを探ります。第5回は「電子チケット」について取り上げます。

電子チケット
独自の規格を武器にさまざまな企業が参入

紙のチケットに代わる存在として、音楽業界では約5年ほど前から使われるようになり始めた、次世代のチケット。EMTGのほか、ボードウォーク、テイパーズ、イープラスなど複数の会社が独自の規格で参入している。電子チケットを購入した後に表示する媒体には、主にスマートフォンが用いられており、電話番号で個人認証を行う仕組み。入場の際に画面に表れたQRコードを読み取るものや、画面上をスワイプしたりするものなどがある。

 音楽業界において、年々ライブエンタテインメントが盛り上がりを見せるなか、チケットも進化しています。その1つが「電子チケット」です。

 2014年に電子チケットサービスを始めたEMTGは、入場の際にスマートフォンの画面に表示された電子チケットに、「電子スタンプ」を押して確認する業界初の方式を開発。電子チケットの未来と可能性について、EMTG代表取締役社長の冨田義博氏に話を聞きました。

冨田義博(とみた・よしひろ)氏
EMTG代表取締役社長
2007年にエキサイト・ミュージックエンタテインメントを設立。10年に独立し、現在の社名に。

EMTGさんが電子チケットサービスに取り組み始めたのはやはり、近年よく話題に上がる転売問題が大きいんですよね。

冨田義博氏(以下、富田) そうです。「不正転売サイトを許さない」という音楽業界の流れを受け、4年前に電子チケットのサービスを始め、昨年は150万枚を弊社で発券しています。

 これまでTHE YELLOW MONKEYやコブクロ、back numberなどのライブ、愛知県で開催している音楽フェス「TREASURE05X」でも採用してもらいました。また「スマホを貸す人がいるかも」ということで、欅坂46のライブなどでは登録した顔写真も電子チケットに表示する仕様となっています。

電子スタンプという方式も興味深いです。紙のチケットや、QRコードを表示するような他の電子チケットと比べると、どのような利点があるのでしょうか?

冨田 弊社の電子スタンプには公演データが入っているため、係員の方がいちいち公演日などを確認する必要がありません。なので、従来の紙のチケットをもぎるスタイルに比べて、スムーズな入場を実現できています。

 また他の電子チケットとの比較では、「コスト面」でのアドバンテージが大きいですね。QRコードのチケットの場合、会場にQRコードを読み取る機器を多数設置する必要があります。しかも専門スタッフがセッティングするので、それなりの費用がアーティスト側に掛かってきます。その点、うちのスタンプはコストも安く、無償で使い回していただいているため、低コストで済むんです。

EMTG電子チケット
EMTG電子チケット
EMTGでは独自に開発した電子スタンプを入場口で押すことで、確認を取る方式を採用。LINEやメールなどを使って、友達や家族にチケットを渡すことも可能となっている

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