女性が手指の爪をきれいに彩るネイル市場に突如、“伏兵”が現れた。玩具メーカーのタカラトミーだ。2021年3月から前代未聞のネイルチップ(つけ爪)のプリント機「ネルチップ」の展開を始めた。1回500円(税込み)という低価格で、ユーザーの好みに応じた様々な絵柄のネイルチップを僅か50秒ほどで高精度に印刷できる。これに反応したのはZ世代だ。ヒットの要因を探った。
2021年3月下旬以降、全国各地にかつてない“プリ機”が続々と設置された。自分の好みのネイルチップ(つけ爪)をその場でプリントして受け取ることができる、タカラトミーの「ネルチップ」だ。
従来、プリ機といえば「プリントシール機」のことを指し、ユーザーが筐体(きょうたい)内で撮影した写真をシール用紙にプリントして提供するものだった。これに対してネルチップは、シール用紙ではなく様々な絵柄をネイルチップにプリントして提供する、全く新しいコンセプトのものだ。
21年3月20日から玩具やキャラクターグッズを扱うキデイランドなど6店舗で先行稼働させると、利用者は計画比250%と好発進を切った。そして、4月上旬から本格展開。全国のアミューズメント施設、商業施設、一部のキデイランド、雑貨店、コスメ・アクセサリーショップなど、ティーンの女子が出没しそうな場所に次々と設置している。その数はすでに400店以上に及ぶ(21年7月16日現在)。本格稼働後の利用も計画比100%以上(休業や時短営業による影響は除く)と、コロナ禍でありながら好調を持続している格好だ。
では、なぜ玩具メーカーのタカラトミーが斬新なネイルチップのプリント機の展開を始めたのか。そして好調な理由は何か。
1回500円、参考にしたのはタピオカドリンク
発端は、20年11月。タカラトミーの組織改編で、世の中にない新規のヒット商品開発を目指す事業部であるHitsビジネス本部が発足したことだ。その中で、ファッションエンターテイメント事業室に所属し、今回のネルチップのマーケティング責任者を務める伊東淑江氏はこう話す。
「タカラトミーはこれまで児童向けの玩具ばかりを扱ってきたが、新規事業では年齢を問わない方針となったため自由度が増し、少し上の年代であるティーン(13~19歳)向けに何か開発できないかと議論を重ねた。その中で、近年は大人の女性の間でネイル市場が拡大しており、特に自宅で行うセルフネイルが流行している。こうした大人のはやりは、化粧トレンドのようにティーンに波及することが多く、有望ではないかと考えた」
このコンテンツ・機能は有料会員限定です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー