政府や自治体から自粛を促され、今春、大学生たちは国内外で楽しむ例年通りの卒業旅行(卒旅)が難しい状況となった。そうした中、大学生の間で大きな話題を呼び、利用客が急増したのが、都会の高級ホテルに仲間と宿泊する新しい形の卒旅。特に、2021年1月、先陣を切ってホテルステイの卒旅プランを展開し始めたホテルニューオータニ(東京・千代田)が人気を博した。その背景にはZ世代攻略のための周到な新戦略があった。

ホテルニューオータニが実施した卒旅プランでは、ホテルで過ごしながら気の置けない友人と写真を撮って思い出の「記録」を残せる
ホテルニューオータニが実施した卒旅プランでは、ホテルで過ごしながら気の置けない友人と写真を撮って思い出の「記録」を残せる

 2020年末、新型コロナウイルスの第3波が襲来し、Go Toトラベル(以下、Go To)事業が一時停止に追い込まれた。年明けには首都圏などで緊急事態宣言が発令され、旅行やレジャー需要は再び一気に冷え込んだ。

 都内では有効な打開策に頭を悩ます高級シティーホテルが多い中、いち早く手を打ったのがホテルニューオータニだ。21年春に卒業予定で、卒業旅行の自粛要請で遠出ができなくなった都内在住の女子大生向けに、友人と宿泊して思い出をつくるホテルステイの卒旅プランを企画。1月20日~3月31日の期間で販売したのだ。「厳しい状況下でも、この時期のマーケットを考えた場合、最も利用が見込めそうな顧客層が、卒旅を予定していた大学生だった」と、ニュー・オータニ マーケティング課の湯本健太郎氏は明かす。

韓国発「ホカンス」とは?

 高級シティーホテルにとって、従来の顧客は国内外の富裕層やビジネスパーソンが中心。大学生はメインのターゲットとは必ずしも一致しない層だ。しかし、実はホテルニューオータニには、大学生など若い層を取り込めた成功体験がある。20年夏、Go Toで東京都を発着する旅行が除外される中、都民限定で6泊7日約10万円の割安プランを提供。すると、前年同期に比べて都民の宿泊者が5倍へと大幅に増えたのだ。都会に暮らす人たちの間でも、都内の高級ホテルに宿泊するニーズが大きいことを発見した。