“勝手に”若者離れする企業やメディア

原田 視聴態度ができ上がっていない人に対し、短い時間に情報を凝縮して送り届けるのが動画であると。とても分かりやすい定義です。

明石 今の若い人たちは、物心ついたときからパソコンやネットがあり、学生時代にスマホを手にしている世代。テレビよりも一番自分に近いデバイスであり、普段から持ち歩き、情報源として、あるいは情報発信のハブとして使っているのがスマホです。

 注目すべきは、その中での時間軸がめちゃくちゃ速いこと。テレビと違って、ネット上にはコンテンツが無限にあり、それらをできる限りチェックするために、いや応なしに処理スピードが速くなる。例えば、出会い系アプリの「Tinder」で、顔写真を見て「アリか、ナシか」を判断するのにかかる時間は平均0.6秒とも言われています。つまり、1秒以下で“将来の恋人”を選んでいるわけです。LINEの返信も、中高年から見たらあり得ないくらい速いですよね。

 そんな猛スピードの情報処理が当たり前の若者にとって、テレビ向けのどんと構えた重厚感のあるコンテンツは、いかにもゆっくりでまどろっこしく見える。例えるなら、悠々と航行する巨大な豪華客船。その横を若者たちはスピードボートでビュンビュンと走っているわけです。

 YouTubeが上陸して10年がたち、それを見て育った若者が、今や社会に出る年齢になり、これから世の中を動かそうとしている。そんな時代のターニングポイントであるのに、今の日本の企業もメディアも、若者向けのコンテンツに手を出したがらない。多数決の論理で言ったら、今はまだパイがなさそうに見えますからね。

ワンメディア代表、明石ガクト氏。1982年静岡生まれ。06年上智大学卒業。14年6月、ミレニアル世代をターゲットにした新しい動画表現を追求するべく創業。Facebook、 Twitter、LINE、SmartNews、Gunosyの公式動画パートナー
ワンメディア代表、明石ガクト氏。1982年静岡生まれ。06年上智大学卒業。14年6月、ミレニアル世代をターゲットにした新しい動画表現を追求するべく創業。Facebook、 Twitter、LINE、SmartNews、Gunosyの公式動画パートナー

原田 確かに以前に比べて日本の若者人口は減っており、消費意欲が停滞してお金も使わなくなっている。広告主から見たら、ダブルでパイが縮んでいるように見えるから、あらゆる業界で“若者離れ”が起こっています。10年以上前から「若者の〇〇離れ」と言われ続けていますが、実は先に離れているのは、既存の企業やメディアの方。結果的に自分たち向けの商品やコンテンツがないから、若者たちが離れざるを得なくなっているのが本質です。

明石 では、自分たち(若者)をしっかり見てくれているメディアがどこにあるのかと言えば、今ですと、YouTuberやInstagramなどのインフルエンサーが、その役割を担っています。「誰をフォローするのか」という形にメディアの見方がシフトしており、それぞれが関心を持つ「イシュー(課題)」でつながっている。それは国籍や人種を超えたイシューであり、例えば性的少数者の「LGBT」の話だったり、海外のどこでも働けるという価値観だったり、海外で暮らすことだったり……。そういった彼らが興味を持つことを、彼らの目線で語る既存メディアは、残念ながら日本には皆無でしょう。

原田 確かに、メディアも広告主の企業も、パイが大きな団塊世代を意識したコンテンツ作りからなかなか脱却できない。例えば、いまだに「荒れる成人式」をテーマにした番組が放送されていますが、実は、成人式は最近荒れなくなってきている(笑)。それなのに、コメンテーターに荒れる若者を叱ってもらい、それを視聴した中高年が留飲を下げるという、お決まりのパターンを作りたがる。若者が、自分たちがディスられるばかりの番組を見ようとしないのは当然のことです。

 もし、明石さんが若者と成人式をテーマにミレニアル世代向けの動画を作るとしたら、どんな内容にしますか?

明石 僕らが動画を作るときに最も注意していることは、変にセンセーショナルな“創作”をして再生回数を稼ぐことではなく、若者の共感、深いエンゲージメントを得ることです。そのために死守しているのが、必ず「当事者」を出すということ。ワイドショーでやるように、成人式と全く関係のない中高年のご意見番にコメントさせることは、断じてしません。

 例えば、まず成人式実行委員の20歳の若者に話をさせ、それに反対のポジションを取る人を当てるなら、成人式で暴れた若者に被害を受けた居酒屋の店長など、明確に事象を共有している当事者だけで作ります。徹底的にリアルでないと、ミレニアル世代のハートには刺さりません。今は荒れなくなってきているのに、「荒れる」というのでは、若者の実感値と違うので、納得も共感も得られるはずがないわけです。

 では、視聴者と深く結び付くエンゲージメントの高いコンテンツとは何か。僕らは、下のように動画によるエンゲージメントを「4つのE」に分解して実践しています。これらを視聴者に約束し、「世界が変わる体験」を提供すること。それだけを追求しているからこそ、熱狂的なコミュニティーにも刺さるし、若者にも受け入れてもらえる、そう考えています。

エンゲージメントを生む「4つのE」
Empowering
(あなたを心から励ます、味方になるストーリーを選ぶこと)
Entertaining
(あなたの1日が、幸せになるような動画を届けること)
Enlightening
(あなたの知りたい情報を正しく、適切に選んで伝えること)
Emotional
(あなたの心が揺さぶられる、感動が止まらないヴィジュアルを作ること)

(2月21日公開の後編に続く)

(写真/高山 透)