アマゾン対抗策を模索する米ウォルマート。西友売却が報じられる一方、ここ最近の買収に伴って米スタートアップの“スター”が同社に集まっている。筆頭は特集第2回で紹介したマーク・ローリー氏だが、負けず劣らずのスターと言えるのがジェニファー・フライス氏である。10年も前に「サブスクリプション型コマース」企業を設立し、米メディアに「テクノロジーの世界で最も影響力のある女性」として選ばれ、一部では“サブスクリプション・クイーン(女王)”などと呼ばれている。特集第3回はそんなフライス氏が主導し、わずか数語をテキストメールするだけで買い物ができてしまうと話題の最新ネット施策、「ジェットブラック」の詳細を見ていく。

「ベントンビルへようこそ。私はここに来て1年になりますが、とても素晴らしいところですね。これからお話しするのは(ウォルマートが)5年先を見据えて、小売りの未来を開く原動力にしようとしているイノベーションです」
2018年5月31日、米アーカンソー州ベントンビルのウォルマート本社で開催した株主総会。フライス氏は居並ぶ聴衆にそう話しかけた。ウォルマートがこの時期に毎年開催している総会では経営幹部が会社の現状や次年度の戦略についてプレゼンするのが恒例になっている。といっても日本のような堅苦しいものではない。有名アーティストが登場するなどエンタメ要素も豊富。さながらウォルマートの「ファン感謝デー」のような雰囲気が漂う。


そんな場に登場したフライス氏が、米経済界で注目されるようになったのは09年。レント・ザ・ランウェイというネット企業を知人と共同創業したことがきっかけだ。
レント・ザ・ランウェイは、女性がパーティーなどに着ていくフォーマルドレスをネットから簡単にレンタルできるサービスを展開した。憧れのデザイナーズファッションを「買うのではなく借りる」。昨今注目のサブスク型コマースを10年ほど前に実現するなど、そのビジネスセンスは卓抜。ローリー氏に口説かれて、17年にウォルマートへ合流する前から知る人ぞ知る存在だった。
そんなフライス氏がウォルマート傘下で今、手がけているのは「カンバセーショナル(会話形)コマース」と自らが呼ぶ最新デジタル施策「ジェットブラック」である。
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