※「日経デザイン6月号」(2018年5月24日発行)の記事を再構成

ブランディングデザイナーの西澤明洋氏が、建築系の出身でありながらも現在は建築系以外の分野で活躍するデザイナーやクリエーターなどにインタビューし、発想の原点を探っていく連載「アーキテクチュアル・シンキング アイデアを実現させる建築的思考術」。今号は、地域の課題を地域に住む人たちが解決するための「コミュニティデザイン」を手掛け、住民参加型の総合計画づくりなどを推進するstudio-L代表のコミュニティデザイナー、山崎亮氏の後編。

山崎 亮氏(左)
やまざき りょう● studio-L 代表、慶應義塾大学特別招へい教授。1973年愛知県生まれ。大阪府立大学農学部で緑地計画工学専攻。メルボルン工科大学環境デザイン学部でランドスケープアーキテクチュア専攻。大阪府立大学大学院・地域生態工学専攻修了後、SEN環境計画室。2005年に「studio-L」を設立。地域の課題を地域に住む人たちが解決するための「コミュニティデザイン」に携わる。まちづくりのワークショップ、住民参加型の総合計画づくり、建築やランドスケープのデザイン、市民参加型のパークマネジメントなどに関するプロジェクトを手掛ける。主な著書に『コミュニティデザイン』(学芸出版社)、『ソーシャルデザイン・アトラス』(鹿島出版会)、『コミュニティデザインの時代』(中公新書)、『まちの幸福論』(NHK出版)などがある

西澤 明洋氏(右)
にしざわ あきひろ●ブランディングデザイナー エイトブランディングデザイン代表。1976年滋賀県生まれ。企業のブランドから商品・店舗開発など幅広いデザイン活動を行っている。「フォーカスRPCD®」という独自のデザイン開発手法により、リサーチからプランニング、コンセプト開発まで含めた、一貫性のあるブランディングデザインを数多く手掛ける。主な仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、ヤマサ醤油「まる生ぽん酢」、博多「警固神社」など。BBTオンライン講座講師。著書に『ブランドをデザインする!』『クリエイティブのつかいかた』など。NHK WORLD『great gear』出演

西澤 SEN環境計画室を辞めたとき、今後のビジョンがあったのでしょうか。

山崎 浅野さんが手掛けていた、住民参加型のワークショップを専門に行う事務所をつくってみたいと思っていました。正確に言うと、設計を担当していた三宅さんと、ワークショップを担当していた浅野さんの両方の性格を受け継ぐ事務所といった感覚です。1つの人格の中で設計もやりながら、ワークショップもやる。ワークショップによってコミュニケーションを高めていくと、次第に自分の頭の中が整理され、それが設計によって形を与えられていくと考えていました。

 こうしたワークショップについては、世界的に知られる建築家レム・コールハースの建築設計事務所「OMA」も行っていましたので、それに憧れていた面もあります。ただコールハースは設計組織のOMAとは別にリサーチ組織としてワークショップを行う「AMO」をつくるなど、設計とワークショップを別々に分けていました。SEN環境計画室でもワークショップのチームは別会社にしていました。だからstudio-Lとして独立するに当たり、設計とワークショップを同じ事務所で実行できるようにしたかったのです。しかしstudio-Lを立ち上げてみて、私の場合はワークショップに専念した方がいいと分かりました。

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