※「日経デザイン7月号」(2017年6月24日発行)の記事を再構成
ブランディングデザイナーの西澤明洋氏が、建築系の出身でありながらも現在は建築系以外の分野で活躍するデザイナーやクリエイターなどにインタビューし、発想の原点を探っていく連載「アーキテクチュアル・シンキング アイデアを実現させる建築的思考術」。今回と次回に登場するのは、法政大学や慶應義塾大学大学院で建築を学びつつも、現在は主にソーシャルデザインの分野で活躍するNOSIGNER代表・太刀川英輔氏の前編。

たちかわ・えいすけ● NOSIGNER 代表。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント学科特別招聘准教授。ソーシャルデザインイノベーション(未来に良い変化をもたらすデザイン)を目指し、見えないものをデザインすることを理念に総合的なデザイン戦略を手がける。グッドデザイン賞金賞、アジアデザイン賞大賞(香港)、PENTAWARDSプラチナ賞(食品パッケージ世界最高位/ベルギー)、SDA最優秀賞、DSA空間デザイン優秀賞など国内外の主要なデザイン賞にて50以上の受賞を誇る。東日本大震災の40時間後に、災害時に役立つデザインを共有する情報サイト「OLIVE」を立ち上げ、災害のオープンデザインを世界に広めた仕事が後に東京都が780万部以上を発行した東京防災のアートディレクションに発展(電通と協働)。2014年には内閣官房主催「クールジャパンムーブメント推進会議」コンセプトディレクターとして、クールジャパンミッション宣言「世界の課題をクリエイティブに解決する日本」の策定に貢献
西澤 明洋氏(右)
にしざわ・あきひろ●ブランディングデザイナー/株式会社エイトブランディングデザイン代表。1976年滋賀県生まれ。企業のブランドから商品・店舗開発など幅広いデザイン活動を行っている。「フォーカスRPCD®」という独自のデザイン開発手法により、リサーチからプランニング、コンセプト開発まで含めた、一貫性のあるブランディングデザインを数多く手がける。主な仕事にクラフトビール「COEDO」、抹茶カフェ「nana’s green tea」、ヤマサ醤油「まる生ぽん酢」、福岡「警固神社」など。BBTオンライン講座講師。著書に『ブランドをデザインする!』など。NHKworld『great gear』出演
西澤 連載「アーキテクチュアル・シンキング」は、建築出身のデザイナーやクリエイターにインタビューし、発想の手法や考え方などを明らかにしようとするものです。僕も建築出身でありながらブランディングデザインを手がけていますので、ほかの方はどういった意識で取り組んでいるのかを知りたいと思ったのが、この連載を始めたきっかけでした。太刀川さんも建築がバックボーンにありますが、今ではさまざまな分野で活動していますね。そうした背景にはどういった意識があるのか、僕の考えるアーキテクチュアル・シンキングと太刀川さんが行っている方法論なども比較しながらお聞きしたいと思います。まずは太刀川さんの学生時代のことを教えてください。
太刀川 僕は法政大学で建築学科を卒業しましたが、その後に進んだ慶應義塾大学大学院では、正確に言うと建築学科ではなく、システムデザイン工学科の中で建築空間の設計を専攻していました。そのとき慶應には建築家の隈研吾さんや妹島和世さん、それに坂茂さんもいて、学生たちに指導していたんですよ。今から思うと、すごい時期でした(笑)。
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