オブザベーション(ユーザー観察)によってユーザーの潜在ニーズを探り、新商品を企画を考える連載。今回のテーマは次世代のユーザーである子供たちの家庭学習。4回に分けて家庭における学習の様子を観察し、今の子供たちの潜在ニーズを探り、デザイン思考によって商品の企画、プロトタイピングまでつなげていく。観察前に実施したアンケートでは、文具などの購入に子供の意向が反映している様子や学習にデジタル機器の活用が広がっている実態が浮かび上がった。また、デザイン思考による商品開発に挑戦するときの壁とその解決策について、専門家に聞いた。

子供部屋とリビングを使い分け

 人口減少が進む中、次世代のユーザーのニーズを把握し、彼らをファンにできるかどうかは、企業の生き残りを左右する。しかし、多くの商品開発担当者にとって、自分の子供を除けば、子供の行動や考えに触れる機会はそれほど多くないのではないか。

 そこで今回、家庭における子供の学習行動を観察することにした。観察対象を選ぶため約6300人にアンケート調査を実施した。その結果から小学4年生から高校性までの子供がいる1022人に絞り込んだ。このうち子供の学習に強い関心を持つ親に、アンケートと電話で家庭環境や学習状況を確認。最終的に3組の家庭を選び、中学3年生の女子、中学2年生の女子、小学6年、5年生の姉妹の家庭学習の様子を観察した。

 今回、観察を通し印象に残ったのは、子供たちがシャープペンシルや消しゴム、ノートなどを使い、昔ながらのスタイルで学習していたことだ。現代においても、紙に手で書くという学習の基本は変わっていない。

 これらの筆記具では、大きなイノベーションは起こっていないが、使いやすさの面では改善が進んでいる。子供たちは、こうした文具を自分の学習スタイルに合わせて選択していた。この後、紹介する選択基準や既存の文具への不満は多くの商品開発者の参考になるはずだ。

 アンケートで、こうした文具などの学習関連用品の選び方について聞くと、「子供と相談して決めている」が62.6%でトップ、次いで「子供がすべて決めている」が28.7%だった。

 いずれにしても文具などの購入に、子供の意向が強く反映されていることが分かる。観察した子供たちが共通して所有している商品があった。学校や塾を通して、商品の評判は瞬時に伝わる。子供の心をつかむことができれば、大きなシェアを獲得することも可能だ。

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