奥谷孝司氏と岩井琢磨氏がオンラインとオフラインとにまたがる「場」で進行中のデジタル革命を追う本連載。今回は九州発の大ヒット商品「九州パンケーキ」を生み出した一平ホールディングス(宮崎市)の村岡浩司社長に迫る。

一平ホールディングス社長の村岡浩司氏が九州にこだわり生み出したオリジナル・パンケーキ・ミックス「九州パンケーキ」(左)と店舗「九州パンケーキキッチン」(右)
一平ホールディングス社長の村岡浩司氏が九州にこだわり生み出したオリジナル・パンケーキ・ミックス「九州パンケーキ」(左)と店舗「九州パンケーキキッチン」(右)

 本連載最後に取り上げる企業は、九州は宮崎県にある一平ホールディングスである。これまで「場の革命」で取り上げてきた企業とは毛色の違うこの会社。原点は、宮崎でレタス巻き発祥の名店として愛される老舗寿司店、「一平寿し」だ。その二代目である村岡浩司氏が九州で取れる穀物に徹底してこだわり生み出したオリジナル・パンケーキ・ミックス「九州パンケーキ」を中心に話を進めていきたい。

 村岡氏は20代の頃に渡米して留学と起業を経験。その後地元に戻り一平寿しの板場に立った後、日本で初めてタリーズコーヒーのフランチャイズ店舗を手がけた事業家である。そんな村岡氏によって2012年に開発・発売された九州パンケーキは、九州産の小麦・穀物で作られている。大分県産の小麦、宮崎県産のアイガモ農法の発芽玄米、長崎県産のもちきび、佐賀県産の胚芽押し麦、熊本県・福岡県産の黒米・赤米、鹿児島県産のうるち米などだ。

 今やオンラインでも展開しており、全国に多くのファンがいる大ヒット商品になっている。筆者らも熱烈なファンだ。17年12月とやや古いデータだが、九州パンケーキは国内約3000店舗のスーパーマーケットや小売店、米国でも13の日系スーパーで販売されている。

 さらに「九州の全域から優れた素材を集め、九州を一つにしたプロダクトに結晶させること」をコンセプトに、食パンなどの「九パン」やパスタなどの柔軟な商品展開によって事業成長を加速させている。

他にない「体験」を生む店舗事業

 主力商品である九州パンケーキは、筆者らも定期的に購入し堪能しているが、商品として大変優れている。なによりおいしい。

 普通は良い商品ができたら、その製造と販売に集中すればよいと考える。これだけおいしいパンケーキなら、仕入れて売りたいと考えるスーパーや小売店は多いだろうし、実際に売れているのは、すでに紹介した通りだ。

 しかし村岡氏はそれに満足せず、商品をより楽しんでもらうために「九州パンケーキカフェ」という店舗事業に乗り出した。すでに九州圏内に加えて海外にも展開し、台湾で3店舗、シンガポールで1店舗をオープンしている。今後はASEAN地域での出店を加速し、21年までにアジア各国で10店舗以上を展開する計画だ。

 なぜリスクが高そうな店舗展開に挑戦するのか。村岡氏は、その理由を次のように語っている。

 「商品がスーパーに並ぶことは確かにうれしい。しかし僕はインストアこそが最強の場だと思っている。自ら店舗を展開することで、この商品を買って、どんな風に誰と食べてくださるのかを想像できる。だからプロダクトとサービスを掛け合わせて提供することが大切だと考えた」

 村岡氏の発想は、顧客時間で言うところの「購入」に留まっていない。その先の「使用」段階にまで思いを至らせ、その場に関わり提案したいと考えていることが分かる。