登山地図アプリ「YAMAP」を提供するヤマップは“非常識”な顧客サポートを武器に急成長している。今回はヤマップがユーザーとのつながりによって生み出した「良き場」について解説する。

 前回はオンライン企業の例として、登山地図アプリ「YAMAP」を提供するヤマップを取り上げた。オンライン企業でありながら、コンタクトセンターを強みとし、顧客とのつながりを築いたことを説明した。

 今回はそのつながりによって、さらにYAMAPが手にしたもう一つの「良き場」について解説していこう。

YAMAPのユーザーが自主的に設立し運営しているオフ会(ユーザー同士が集まるイベント)が全国各地に存在している
YAMAPのユーザーが自主的に設立し運営しているオフ会(ユーザー同士が集まるイベント)が全国各地に存在している

つながりが「良き場」を生む

 企業とユーザーとのEngagementをどう可視化し何で測るか。それは企業によって異なる。LTV(顧客生涯価値)で測る、NPS(ネット・プロモーター・スコア)で測るなど、KPI(重要業績評価指標)の設定もさまざまだろう。しかしどのような指標を持つにせよ、自社の基盤となっている顧客は誰なのかを、その指標に基づいて可視化できることが重要である。

 まだ数は少ないが、ヤマップもオンラインショップでオリジナル商品を発売したり、登山に関する保険を販売したりしている。もちろん、その購買履歴データなども、顧客基盤を可視化する指標にできるかもしれない。だがヤマップにとっては、登山を愛し、オンラインでの投稿や会員同士のつながりなどが活発な方ほど、Engagementが高いと考えている。

 その代表が、オフ会(ユーザー同士が集まるイベント)に参加してくださるユーザーの方々だろう。ヤマップはオンラインのコミュニティーを提供する企業でありながら、全国の都道府県には、YAMAPユーザーによるオフ会が存在するのだ。彼らは自分たちのことを「YAMAPPER(ヤマッパー)」と呼び、オンラインでつながった同じ山を愛する人々が、オフラインでもつながりを深めている。しかも驚くべきは、これらのオフ会は、「ユーザーさんが自主的に設立し運営している」ということだ。つまりヤマップが主催したものではない。

 ヤマップの最初のオフ会は、本拠地である福岡市で開かれた。そのきっかけをつくったのが、前回YAMAPの「コアチャネル」として紹介した、カスタマーサポートだったという。まだ創業間もない頃、カスタマーサポートにユーザーである男性から、「春山さん(慶彦社長)、一度ごはんを食べませんか」という誘いが入ったというのだ。そこで実際に出かけていくところが春山社長のユニークなところだが、彼はそこでユーザーと直接話し、これまでにない経験をすることになる。

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