データ・ドリブンかつ業界初の飲食店モデルづくりに取り組むスタートアップ、favy(ファビー)の儲かる仕組みを解き明かす特集の第2回目。同社が2016年に始め、そのノウハウの横展開により100店以上に広まったヒット企画「ローストビーフ&生ハム食べ放題(1000円)」の驚きの利益構造を明らかにする。データによる効果検証で、いかに赤字覚悟の出血大サービスから脱却したのか?

自家製のジューシーなローストビーフとイタリア産の生ハムが、たった1000円で食べ放題(2時間)――。こんな魅惑のプランを打ち出す飲食店が、ここ数年で都内を中心に増えている。実は、この食べ放題企画の発信源もfavyだ。ともすれば、赤字覚悟の客寄せキャンペーンになりかねない企画だが、データに裏打ちされた確かな勝算を基に組み立てられている。
この食べ放題企画は、favyが2016年2月にオープンした初の直営レストラン「C by favy(シー バイ ファビー)」で生まれた。この店は、飲食店におけるデータ取得をどのように行えばマーケティングに生かせるかを検証し、独自の顧客管理システムを構築するための実験店(現在は閉店)。予約台帳やレジ、ハンディー端末など、当初は既存のツールのAPIを開放してもらう交渉をしながら、それぞれで収集した顧客データをつなぐシステムを開発。当時は手作業の部分も多かったが、ネット予約から来店、店での実際の注文内容まで、一連の顧客データをトラッキングできるようになった。この仕組みがない多くの飲食店では、「そもそも食べ放題プランの利用客とフリーで訪れた客、新規来店か既存顧客かなどをデータ上で区別できない。そのため、食べ放題の費用対効果をろくに検証できないまま、“どんぶり勘定”に近い形でしか実施できていなかった」(favyの高梨巧社長)という。
必要なデータ取得のめどが立ち、16年10月にネット予約限定で打ち出したのが「1000円ローストビーフ&生ハム食べ放題」だ。そのお得感から、すぐさま大きな話題を呼び、たった1日で480件の予約を獲得。当初4日間で食べ放題企画に参加した顧客の支払合計は約90万円に達した(下表)。これを1カ月続けると、約700万円もの売り上げがプラスされる計算になる。
食べ放題プランの利用客は、「どれだけ食べたら元を取れるか」と考えるのが普通だ。その点、1000円でローストビーフと生ハムが食べ放題になる本企画は、食材原価の平均が1428円だから利用客に損はない。ただ、これだけだと店側は赤字だ。しかし、高梨氏は「ほぼ確実に儲かる仕組み」と自信を見せる。それは一体なぜなのか。
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