データ・ドリブンかつ業界初の飲食店ビジネスモデルづくりに取り組むスタートアップ、favy(ファビー)の儲かる仕組みを解き明かす特集の1回目。完全会員制レストランの「29ON(ニクオン)」や日本初の定額制コーヒースタンド「coffee mafia(コーヒーマフィア)」など、新たなビジネスモデルを次々に成功させてきた同社の強さの源泉は、ネット通販並みのデータ活用によるマーケティング手法を飲食業界に持ち込んだことにあった。

東京・西新宿の、とある雑居ビルの一角にそのレストランはある。住所や電話番号は非公開、建物には目印となる看板すらない。ある平日の夜に訪れると、ひっそりとした店の佇まいとは裏腹に店内は複数のグループ客でにぎわい、じっくりと低温調理された極上の肉料理を頬張る満足げな客の姿があった――。
この看板のない飲食店の正体は、年会費による完全会員制レストラン「29ON」だ。現在、西新宿の他、池袋、表参道、代官山に計4店舗を構える。実に数千人に上る会員のうち、半数はクラウドファンディングの「Makuake(マクアケ)」で同店の立ち上げを先行支援した永久会員、残り半数は毎年1万4000円の年会費を支払う“通常会員”。仮に通常会員を1000人とすると、それだけで年間1400万円もの売り上げになる計算だ。メニューはリーズナブルなコース料理(5000~7000円)1本で、一見さんお断りの高級店が採用する会員制度より、ずいぶん敷居は低い。そのため、会員は“自分の店”を披露しようと、非会員の友人や家族を連れ立って足しげく通う。
飲食代=収益という“一本足打法”で勝負する大半の飲食店に対し、ロイヤルティーの高い会員による年会費も収益源に加わる29ONは、食材原価率50%と異例の高設定(通常は30~35%程度)ながら、その利益率は20%を優に超える。外食業界の平均利益率が4%(日経MJ「16年度飲食業調査」)と低水準にとどまるなかで、実に5倍以上の利益をたたき出しているのだ。
この大繁盛レストランを切り盛りするのは、飲食業界生え抜きのプレーヤーではない。2015年創業のスタートアップ、favy(東京・新宿)だ。同社を率いる高梨巧社長はネット広告代理店・アイレップ出身で、SEM(検索エンジンマーケティング)やSEO(検索エンジン最適化)事業の立ち上げを担ってきたデジタルマーケティングの専門家。同社役員には大手外食チェーン出身者も参画しているが、基本は外食畑以外を含めた“異種混合チーム”だ。それが今、29ONをはじめ、日本初の定額制コーヒースタンド「coffee mafia(コーヒーマフィア)」(新宿、飯田橋)や、シェフが企画する食体験イベントと参加者のマッチングサービス「ReDINE(リダイン)」など、飲食業界に革新をもたらす斬新なビジネスモデルを次々に打ち立てている。29ONやcoffee mafiaの定額モデルを取り入れたい大手外食チェーンからのラブコールが引きも切らない状態だ。

では、飲食業界を席巻するfavyの強さの源泉は何か。
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