BSやCSでのCMで弾みを付けて地上波へ

 大量生産の技術開発などに力を入れて体制を整えた後、15年8月、捲土(けんど)重来を狙って始めたのが、シニア層に強いBSやCS、地方局を中心としたテレビ出稿だ。

 「石坂浩二さんが趣味の鉄道模型作りを楽しむCMをメインに、ジュディ・オングさん、長谷川初範さん、川崎麻世さんらを起用したCMを放送したところ、取扱店舗が毎月500店のペースで増えて、採算も黒字になりました。

 ただ、BSやCSは、キー局と比べると視聴者数が少ない。より拡大させるのは地上波だと思い、宣伝広告費100億円をベットする賭けに出ました。それが、17年12月からの舘ひろしさんを起用したCMです」(松村氏)

 舘が若い女性に「パパ」と呼ばれながら、夜景が見えるレストランでディナーを楽しむ――この父と娘の関係性が「パパ活」に見えると話題に火がついた。そして18年2月、平昌冬季五輪の中継番組スポンサーとなって同CMを大量投下すると、認知度が急上昇。取扱店舗は「1カ月に3000店のペースで増え続けました」と喜ぶ。

 実は松村氏、この舘ひろし編からCMに積極的に意見を出すようになっていったという。

 「企画にはもちろん、撮影現場でも『もっとアップで撮ってください』とか口を出してました。いい役者は表情がいいから、アップで撮った方がいいんですよ。なのに監督は引き画で格好よく撮ろうとして、『夜景をもっと見せたい』『花火を打ち上げよう』なんて言っている。花火とハズキルーペ、何も関係ないじゃないですか。なんで、そんな意味のないところに尺をとるのか……。その場で文句を付けたら、監督が真っ青になって、『会長、ここからはもう僕らがやりますから!』と制されたんです。俺はスポンサーなのに(笑)」(松村氏)

 館編の「次」が、渡辺謙と菊川怜のプレゼン形式CMだ。渡辺については、映画『SAYURI』(05年)などを見て、前々から大ファンだったという。

 「渡辺謙さんは横顔に生きざまがにじむ、一流の役者。いつかCMに出てもらいたいと思っていました。ただ、当時58歳。ルーペのCMをやってくれるだろうか、と不安もあったんです。でも快く『やりましょう』と言ってくれました」

 しかも前編で紹介したように、「世の中の文字は小さすぎる!」など怒りをテーマにCMアイデアも出してくれたという。松村氏は新たに組んだ代理店とクリエイターに「謙さんの『怒り』をテーマにしてほしい」と話したが、その後、提案された企画に「怒り」が入っていなかった。さらにもう1人、別のクリエイターに頼んでも、また「怒り」がなくあきれた。