竹内涼真と浜辺美波を起用した味の素「Cook Do(クックドゥ)」のCMが、銘柄別CM好感度ランキングの10位(2018年12月前期/CM総合研究所調べ)に入るなど好評だ。この記事では誕生の背景を紹介した上で、企画・統括を担当したクリエーターを紹介する。

2018年11月から放送の「干焼蝦仁」編より。『家族』というキャラクターを際立たせるために、7人家族の設定にした。次男役と三男役の子どもたちは『仮面ライダードライブ』世代で、演じていた竹内は憧れの的。「ドライブ兄ちゃん!」と呼んで慕っているとか
2018年11月から放送の「干焼蝦仁」編より。『家族』というキャラクターを際立たせるために、7人家族の設定にした。次男役と三男役の子どもたちは『仮面ライダードライブ』世代で、演じていた竹内は憧れの的。「ドライブ兄ちゃん!」と呼んで慕っているとか

発売から40年目の大規模リニューアルに至るまで

 味の素のクックドゥは、1978年に発売された中華合わせ調味料。初期のCMには黒柳徹子を起用し、「Cook Doしましょう」をキャッチコピーに家庭で本格中華を作れることを訴求した。その後、2001年に木梨憲武が家族でダイナミックに食べる「中華団欒」シリーズを開始してヒット。11年には父親役に山口智充、娘役に杉咲花を起用した「食欲全開」シリーズが大ヒットしたことで売り上げも飛躍した。11年まで40%以下だった購入率を一気に50%まで押し上げた。

 「食欲全開」シリーズは勢いを増し、13年度にはCM好感度ランキング「食品業類」で1位、全業類対象の総合ランキングで13位となり、初めて年間総合トップ20に入った。しかし、以降は徐々に下降し、15年度には食品業類で3位、総合28位に。16年度には業類別で2位にアップしたが、総合では32位になった。17年度は業類別でトップ10圏外となり、総合39位に。売り上げも頭打ちになったことから、味の素は抜本的な改革に乗り出した。

 まず行ったのは、クックドゥと中華料理の本質を改めて見つめ直すこと。その結果見えたのは、3つの大きな価値だという。1つは、できたての勢いやアツアツ感といった簡単、手作りならではの「おいしさ価値」。2つめは家族だんらんで心も元気になる「共食価値」。3つめはタンパク質と野菜がたっぷり取れて体も元気になる「栄養価値」。

 この3つの価値を押し出すべく、着手したのがパッケージのリニューアルだ。栄養のある肉や野菜を写真でしっかり見せつつ、「家族で食べられそう」と思ってもらえるように「大皿感」を強調。メニュー写真を大きくして迫力を出すことで、よりシンプルで「おいしそう」なデザインになった。そしてCMも、「『食欲全開』シリーズを徹底的に分析した」と味の素広告部の原口智氏は言う。

 「食欲全開シリーズは、おいしさをエンターテインメントとして描いた企画。そのために『ひたすら食べる』というシーンが多くなり、CMの企画の幅が広がらないという欠点がありました。また、確かにうまそうなメニューとして描けてはいるものの、それは果たしてクックドゥでしか言えないポイントなのか。競合のエスニック料理や、冷凍食品や中食といった別の選択肢が増えている中、“うまそう”だけでは今どきの期待には応えられていなかったのではないかと思いました」(原口氏)。

 そこで新パッケージを参考に見てもらいながら新CMの相談をしたのが、「食欲全開」をともにヒットさせた電通のクリエーティブディレクター・佐藤由紀夫氏だ。

意識したのは家族の「キャラ立ち」

 佐藤由紀夫氏は美大卒業後、91年に電通入社。アートディレクターとして採用されたが、「CMが好きだから」と2年目にはプランナーに転向した。そして96年に企画を手掛けたのが、サンギの「アパガードM」。東幹久と高岡早紀がハワイで「芸能人は歯が命」と笑うこのCMは同年の年間好感度ランキングで10位に入った他、ACC賞なども受賞して大ヒットした。さらに97年には篠原ともえ出演の、たかの友梨ビューティークリニック「ココロノウサギ」編がヒット。現在は、電通クリエーティブ・ディレクション・センター長を務めている。

 「CMを作る上で大事にしているのは、『キャラ立ち』です。『バガボンド』『SLAM DUNK』などの漫画家・井上雄彦さんが『キャラクターがいれば、ストーリーはいらない』とおっしゃっていたんですが、僕も同じ考え。このキャラクターはどんな人なのか、15秒で視聴者に分かってもらうことが大事だと思っています。

 例えば最近は、娘がドSで、お父さんがドMという関係がトレンドみたいになっている気がするんです。お父さんは娘からないがしろにされていて、でも娘の言うことは絶対に聞く(笑)。そういう関係性が見えてキャラが立てば、視聴者は画面に引きつけられて、そのCMが好きになる。そういう計算のもと、『食欲全開』では杉咲花ちゃんをドSに、ぐっさん(山口智充)をドMのキャラクター設定にしました」。

 新シリーズ「中華が家族を熱くする。」では「家族」のキャラ立ちを考えたという。

 「リアリティーを追求すれば、今の時代に7人家族は多いと思うんですけど、それくらい増やした方がマンガっぽくなって、『家族』というキャラクターがガッと立ってくる。これだけの大家族でワーワーすると『中華っぽい』というところにつながるし、家に帰るとみんながいて、ご飯が楽しいっていう『共食価値』にもつながるのではないかと思いました」。

タレントを見極めて「顔になってもらう」

 そうして5人兄妹の長男役に竹内涼真、長女役に浜辺美波を起用する。このキャスティングをしたのは竹内が17年10月期のドラマ『陸王』に出演する前で、「社内にもまだ竹内くんのことを知らない人が多かった」と原口氏。また、浜辺も初主演映画『君の膵臓をたべたい』が公開されたころで、ブレーク前夜での起用だった。

 「竹内涼真くんはメジャー感があって明るく、曇りの部分があまり感じられないところが商品に合っていると思いました。浜辺さんも明るく、万人に好かれるタイプ。2人ともまだ今ほど世に出てなかったんですが、『ブレークしそうな一番いいタレントを使おう』ということで採用になりました。企業には、まだあまり売れてないタレントに懸けることに抵抗がある方が多いんですが、味の素さんは『このCMで育てようという』希有なクライアントさんなんです」(佐藤氏)。

 味の素がブレーク前のタレントに懸けた理由はシンプル。「長くブランドの顔になってもらいたいから」だ。

 「例えば杉咲花ちゃんは昔、バラエティー番組に出たりすると、『回鍋肉の子だ!』と言われたりしていたんです。それは彼女を見たら、クックドゥを思い出してもらえるということ。そういうことが非常にありがたいので、長くブランドの顔になってほしいんです。今回は久々にタレントを変えるということで、また長くブランドの顔になっていただける方がいいと思いました」(原口氏)。

 起用の際にはもう1つ、ポイントにしたものがあるという。後編では「食」のCMならではの起用理由や、「おいしそう」と胃袋を刺激するCMの作り方などを紹介していく。

(写真/中川真理子)