お笑いグループ・ぼる塾を起用した、給湯器交換専門店・正直屋のテレビCM。「あんりがアップでキレるCM」というとピンと来る人もいるだろう。需要期に大量投下し、短期間に問い合わせ数を増やすのが目的。思惑は当たり、21年11月前期銘柄別CM好感度の7位、問い合わせ数も「通常の3倍」を達成した。
お笑いグループ「ぼる塾」の3人が、作業服姿でお辞儀をする。中央のあんりが「正直屋です。給湯器をご購入の際は、3社から相見積もりしてください」と話すと、右の田辺智加にカメラが急接近。「アップにしすぎだろう、おい!」とあんりが怒る。気を取り直して、左のきりやはるかから順に訴える。「正直屋を」「相見積もりに」「加えて……」、また寄り過ぎのカメラに、「おい!」とあんりがキレて……。「面白い」「インパクト強すぎ」と話題になった、正直屋の「ストレートトーク篇」だ。
正直屋は、愛知県に拠点を置く給湯器交換専門店。運営するアズクリエイティブ(名古屋市)は、2009年の創業当時、インターネット集客事業を行うIT系の企業だった。
「当社の代表は、建築業界出身。リフォーム事業も並行して始めたところ、メーカーさんから給湯器販売を持ちかけられて、10年から『正直屋』を始めました。15年よりフランチャイズ展開を本格化させ、現在は全国で100店舗以上を運営しています」(アズクリエイティブFC事業部部長の大島徹也氏)
テレビCMは、16年から愛知県で放送スタート。当初は、シャワーのお湯が出なくなった家に正直屋のスタッフが駆け付け、給湯器を交換するというオーソドックスなものだった。
20年に、関東や関西圏での放送を開始。「給湯器をご購入の際は、必ず相見積もりをしてください」と声と文字のみで訴求したCMが、法律事務所のCMを想起させて話題に。そして21年、ADKクリエイティブ・ワン(東京・港)の村山貴浩氏をクリエイティブディレクターに迎え、初のタレントCMに挑戦することになった。
「メインターゲットは、主婦の方。給湯器交換業者は男性のイメージが強いので、女性の方が柔らかい雰囲気になっていいだろうと正直屋さんから話がありました。そこで、女性からの支持が高く、今勢いがあって、さらにCMに初出演する方を選んで、注目度を上げたいと。総合的な観点から、一番良かったのが、ぼる塾さんでした」(村山氏)
給湯器交換の需要が高まるのは、床暖房をつけたり、温かいお風呂に入りたくなったりする、秋から冬。今回の狙いは、需要期にCMを大量投下し、短期集中で視聴者からの問い合わせ数を増やすことだった。
「これまでも正直屋さんが訴求してきた『相見積もりしてください』というメッセージを核に、インパクトのある企画を考えて問い合わせにつなげてほしいというオーダーがありました。メッセージを際立たせるには、いろいろ詰め込まず、シンプルな企画にした方がいい。とはいえ、ただストレートに話すだけでは記憶に残りにくいので、SNSで話題にしたくなるような、ツッコミどころを作るよう意識しました」(村山氏)
こうして、映画のパロディーや、ぼる塾が80年代アイドルにふんするものなど、12もの企画を提案。そのなかで最もぼる塾らしい、あんりを軸にトークを展開する企画が採用された。
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