サラリーマンシリーズで人気を得ているニトリ「Nウォーム」「Nクール」のCM。今回は、好感度ランキングでトップ10入りを果たした新作での衣装、演技、ロケーションなどのディテールについて、監督を兼任するクリエイティブディレクター・太田樹氏(博報堂プロダクツ)に聞く。
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過去の作品を元ネタや伏線にする
毎年、新ネタを3連発して笑わせるニトリの「Nウォーム」「Nクール」のCM。2020年の「Nウォーム」の1ネタ目は、オフィスで居眠りして椅子から転げ落ち、重役の足にしがみつくというものだ。「ネタの中には、我々の実体験も含まれます(笑)」と太田氏。
「大事な状況で居眠りしてしまうネタは数年前にもやっていて、今回はそのバリエーション。最初は、椅子に座ったまま崩れ落ちそうになっているサラリーマンを、上司たちが現場検証中の刑事のように眺めているという設定だったんです。それに対して、ニトリさんから『社内でだらしなく寝ている姿は、見る人に不快感を与える』とご意見をいただきまして。寝言を言ってしまう、背伸びをしてそのまま後ろの重役にパンチしてしまうなど、いろいろなパターンを現場で試しました」(太田氏)
2ネタ目は、ビルの入り口で、自動ドアと間違えてガラスの壁にぶつかるというもの。これも太田氏の実体験で、過去のネタのバリエーションでもあるという。
「以前、ケータイで話しながらガラスの壁に突っ込んでいくというネタをやったんです。ただ今回は歩きスマホの問題につながらないようにしようと、ビル前で仲間と別れて、『じゃあね』と手を振って前を見たらガラスがあったという流れにしました。
撮影では、サラリーマン役の清水伸さんがぶつかるたびに『ドーン!』という音がして、本当に頭をぶつけているんだと思ったんです。だから『もう、ぶつけなくていいですよ』と言ったのですが、実は足か腕を使ってうまく音を出していたみたいで、さすが役者さんだなあと。完成したCMでは、清水さんが出したリアルな音を使っています」(太田氏)。
3ネタ目は、リモート会議中に猫を追いかけて立ち上がると、下半身がパジャマ姿だとバレるもの。これも太田氏の実体験をベースにしたものだ。さらに過去のCMとのつながりもある。
「CMで少し前に、出社したら下半身がパジャマのままだったというネタをやったんです。この企画を考えたときにそれを思い出して、スタイリストさんに『あのパジャマ、捨ててないよね?』と連絡を取りました。サラリーマンが同じパジャマを着ていることで、過去作が1つの伏線になると思ったんです」(太田氏)
ほかにも、会議で映した写真が宴会でハメを外した過去作のものだったりと、気づいた人だけが楽しめる小ネタがCMにはちりばめてある。「Twitterのクチコミを見ると、そういった細かい遊びに気づかれている方が何人もいらっしゃって。みなさんにしっかりと見ていただけてありがたいです」(ニトリCM担当者)。
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