2020年、お笑いコンビ・ぺこぱを新キャラクターに迎え、CM好感度トップ10入りを果たした日清食品の「チキンラーメン」。前回に続くこの記事では、同CMを手掛ける電通のクリエイティブディレクター・東畑幸多氏を紹介。また、近年ヒット作を連発している日清食品のCM作りに迫る。

日清食品の「チキンラーメン」のテレビCM「ベランピング」篇
日清食品の「チキンラーメン」のテレビCM「ベランピング」篇

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 日清食品創業者の安藤百福氏が、1958年に発明した世界初の即席麺が「チキンラーメン」だ。CMでおなじみの「♪すぐおいしい、すごくおいしい」というメロディーは、音楽家・鈴木さえ子氏の作曲・編曲で生み出され、84年に初登場。80年代はイラストレーターの南伸坊氏やカヌーイストで作家の野田知佑氏、90年代は作家の畑正憲氏らがキャラクターに起用されてきた。

 2000年代は、TOKIOの国分太一や仲間由紀恵らが出演。11年には、芦田愛菜がオリジナルキャラクター「ひよこちゃん」の着ぐるみをまとったCMが話題となった。そして13年からは、新垣結衣出演シリーズで人気を博してきた。

 「チキンラーメンは、誕生から60年以上たつ老舗ブランド。通常のブランドサイクルであれば衰退していくフェーズにありますが、僕らのミッションは、100年愛される『100年ブランド』にすること。そのために社会情勢などに合わせてターゲットを変えながら、鮮度感を出すことに注力してきました。

 変わらず大事にしてきたのは、『食べてみたい』というトライアルの気持ちを起こすこと。例えば新垣さんに『つけ麺にしてもおいしい』と食べ方を提案してもらったり、『雪の中で食べるとおいしい』とオケージョン訴求をしてもらったりしてきました」(日清食品ホールディングス宣伝部 部長の米山慎一郎氏)

 近年のCM好感度をみると、新垣が卵の白身にお湯をかけて「しろたま」を作った17年が銘柄別年間総合の37位。18年には面倒くさがりの「ぐで垣結衣」とひよこちゃんがからむCMや、具付き袋麺「チキンラーメン アクマのキムラー」のアニメーションCMなどを展開して総合8位に入った。この18年からチキンラーメンのCMを手掛けている電通のエグゼクティブ・クリエイティブディレクターが、東畑幸多氏だ。

プレゼンは「セッションの場」

 東畑氏は1975年、東京都生まれ。99年に電通へ入社してCMプランナーとなった。初期の代表作は、リクルート・リクナビの「山田悠子の就職活動」や、ショッカーにサラリーマンの悲哀を重ねた同社「B-ing」のシリーズ。これら2作で2007年度のACC CM FESTIVALにて「ベストCMプランナー賞」に輝いている。

 そんな東畑氏に注目したのが、ソフトバンク「白戸家」やサントリー「BOSS」などで知られるクリエイティブディレクター・佐々木宏氏だ。08年に佐々木氏のもとで放った江崎グリコ「OTONA GLICO」のCMでは、“25年後の磯野家”を実写で描いて大ヒット。東畑氏はクリエイター・オブ・ザ・イヤーを受賞する。

 以降も、北野武や木村拓哉が戦国武将を演じたトヨタ自動車「ReBORN」や、宇多田ヒカルの「サントリー天然水」、ONE OK ROCKと庵野秀明を起用したホンダ「GO,Vantage Point.」などの話題作を手掛けてきた。日清食品とも縁は深く、11年に「BOIL JAPAN.」、13年から「SURVIVE!」、16年には「OBAKA’s UNIVERSITY」とカップヌードルのCMを多数担当してきた。

 「日清食品さんは、ほかのクライアントさんとはまったく違います。普通は効率化と最適化を重視し、無駄と余白をなくすんです。でも日清さんは、その無駄と余白こそを大切にする。本当は、それらが人の心を動かすことを知っていらっしゃるんですね。

 プレゼンの場も、普通と違う。通常のプレゼンは、ガッチリ固めた企画をお持ちして、『これでどうでしょう』と説明する場になるんです。だけど日清さんの場合は、それをベースに、ジャズのセッションのように一緒に作っていく形になる」

 その“セッション”には、同社の創業者・安藤百福氏の孫で現在の日清食品社長・安藤徳隆氏も参加するという。日清側から次々とユニークな案が出てくるそうで、東畑氏は「日清さんとの打ち合わせは、宇宙に旅立つよう」と笑う。

 「例えば『チキンラーメンは、キャンプをしながら、外で食べるのがおいしい』と言われ、アウトドアでチキンラーメンを食べるような企画を持っていったら、『それでは普通すぎるし、そもそもキャンプに行くのって面倒くさいよね』と(笑)。でも、そういう本音を言ってもらえることは大切だし、すごくユニークな仕事の進め方だと思います。そこになるべく反応できるように、常にオープンマインドでいたいなと心がけています」(東畑氏)

 今回のテーマとなった「ベランピング」も、そんなセッションの場で出てきた言葉だという。確かに「キャンプに行くのは面倒くさい」というハードルをクリアしながら、「チキンラーメンを外で作って食べる」という原体験を親世代から子世代につなげる目的はしっかりと果たしている。

新作CMのテーマを「ベランピング」にしたのは、日清食品との打ち合わせで「チキンラーメンは外で食べるのがおいしい」という話が出たのがきっかけ
新作CMのテーマを「ベランピング」にしたのは、日清食品との打ち合わせで「チキンラーメンは外で食べるのがおいしい」という話が出たのがきっかけ
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