「5Gってドラえもん?」で銘柄別CM好感度1位になるなど話題を呼んだソフトバンクのテレビCM。過去2回では企画意図や狙いを紹介した。本記事ではシリーズ立ち上げからの展開や監督、長寿化のメリット、クリエイティブディレクター・佐々木宏氏の広告論などを探っていく。
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ドアの色で白戸家と野比家を表現
2020年3月からスタートした「5Gってドラえもん?」シリーズ。第1弾「スタート」篇は、白戸家のお父さんが「おーい、5G!」と呼びかけて白いドアの中に入っていくと、もう1つのピンクのドアからブルース・ウィリスが登場し、「ぼくドラえもんです」と自己紹介するというものだ。
クリエイティブディレクターを務めた佐々木宏氏によると、白いドアとピンクのドアを象徴的に使うのは、アートディレクター・浜辺明弘氏(佐々木氏と「サントリー・ボス」などを担当)のアイデアだったという。
「白戸家はホワイトドア、『ドラえもん』はどこでもドアで、ピンク。そもそもは、白戸家の隣に野比家が引っ越して来たことを伝えるグラフィック用のアイデアだったんです。それをソフトバンクさんにご提案したら、『テレビCMでもやるといいんじゃないか』という話が出まして、シリーズ開始の“扉”の広告として作ることになりました」(佐々木氏)
第2弾の「登場」篇は、レコードで言えば「両A面」になっているという。
「片方は白戸家の屋根を突き破ってドラえもんが登場するもの。もう片方は、ドラえもんを追って白戸家が外に出ると、引っ越してきた野比家と合流するというもの。両方とも、本で言えば扉の次の1ページ目というイメージです。
そして次の『タケコプター』篇は、5Gの時代になるとどういうメリットがあるのかを、スポーツを絡めて伝えようというCM。ソフトバンクさんには『福岡ソフトバンクホークス』があるので、ドラえもんたちがタケコプターで自在に動きながら野球観戦を楽しむという映像で5Gの魅力を表現しています」(佐々木氏)。
これらのCMを展開しながら、7月からサントリー・クラフトボスのほうで、堺雅人が会社員を演じる「宇宙人ジョーンズ 農場」篇と「銭湯」篇にどこでもドアが登場し、アニメのドラえもんも顔を出した。一見コラボしているようにも見えるが、これはサントリーのボス「宇宙人ジョーンズ」もソフトバンクの「5Gって ドラえもん?」も、同じ八木敏幸監督が演出していることでスムーズに実現した企画と言える。
「例えば、どこでもドアを開けてどこかに行く時、ドアの向こうに急に氷河が現れたりしないと、どこでもドアっぽくない。タイムマシンも、引き出しの中に宇宙っぽい空間が見えないとSF的な世界にならないんです。マンガだと簡単にできる表現も、実写にするのはけっこう難しい。そういう実写の世界観を上手に、しかもあまり予算をかけないで(笑)、楽しく作れるのが、八木さんという監督の超絶素晴らしいところ。この企画は八木監督に頼っているところが多々ありますね」(佐々木氏)
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