2020年4月前期や8月前期の銘柄別CM好感度調査で1位に輝いたソフトバンク。新シリーズ「5Gってドラえもん?」が人気をけん引した。前回に続き、本記事では手掛けたクリエイティブディレクター・佐々木宏氏と、ソフトバンクのCMの歩みをひもとく。

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広告業界を代表するヒットメーカー

 2006年、英ボーダフォン日本法人を買収して誕生したソフトバンク。そこで、広告クリエイティブを統括したのが、「5Gってドラえもん?」を手掛けた佐々木宏氏だった。当時、佐々木氏は孫正義社長に「全部、僕に任せてください」と言ったという。以降、ブラッド・ピットとキャメロン・ディアスを起用して、スタイリッシュなイメージでブランドの垂直立ち上げに成功。並行して「白戸家」を生んで、お茶の間の人気も得るという離れ業を成し遂げた。

 佐々木氏は、1977年に電通入社。6年後に念願のコピーライターになったが、上司の命を受け、35歳でクリエイティブディレクターに。この全体を統括するプロデューサー的役割が肌に合っていたという。

 以降、樹木希林出演の富士写真フイルム(現・富士フイルム)「フジカラーのお店」「お正月を写そう」、JR東海「そうだ 京都、行こう。」、トヨタ自動車「トヨタ・エコプロジェクト」、KONISHIKI出演の「サントリーウイスキー」などのヒットCMを連発。中でも「サントリー・ボス」は、矢沢永吉がサラリーマンを演じた90年代から現在の「宇宙人ジョーンズ」まで継続して30年近く担当している。

 電通時代はクリエイティブ局長などを歴任するが、「現場の親分的存在でありたい」と、2003年にクリエイティブ・ブティック「シンガタ」を設立。『サザエさん』の25年後を実写で描いた江崎グリコ「OTONA GLICO」、全日空の「LIVE/中国/ANA」「ニューヨークへ、行こう。」、資生堂「UNO FOGBAR」トヨタ自動車「ReBORN」「ドラえもん」「TOYOTOWN」などをヒットさせて19年に卒業。現在は独立し、シェアオフィス型の「連」を立ち上げている。

14年連続CM好感度トップ3に貢献する「白戸家」

 佐々木氏のキャリアの中でも、最も多くの人たちに知られるブランドの1つがソフトバンクだろう。

 父・次郎、母・正子(樋口可南子)、息子の小次郎(ダンテ・カーヴァー)、娘のアヤ(上戸彩)という4人家族だが、お父さんの次郎はなぜか白い犬……という一風変わった「白戸家」は、ソフトバンクの顔となり、06年から14年まで8年連続銘柄別CM好感度1位を獲得した。

 意外な展開を見せるのも、このシリーズの特徴だ。15年は染谷将太と広瀬すずが次郎と正子の学生時代を演じ、17年には「白戸家が終わる?」と見せかけて終わらない竹内涼真出演シリーズで盛り上げた。18年は寝台列車を舞台にした「ミステリートレイン」シリーズで、「ハズキルーペ」のCMで話題になった菊川怜の「お尻踏み」などとコラボ。19年にはアニメ映画『天気の子』とコラボしたCMが話題を呼んだ。

 過去にも、12年の白戸家CMに「宇宙人ジョーンズ」が登場したり、16年に『君の名は。』と絡んだりと、白戸家シリーズはコラボが少なくない。その理由について、ソフトバンクでCMを手掛ける新井英成部長と佐々木氏はこう語る。

 「コラボすることによって、お互いのファンに話題にしていただける。相乗効果が得られることが非常に大きいと思っています」(新井氏)

 「シリーズを長く続けていると、だんだん飽きられます。でも旬なものがぽんっと入ると、定番ドラマが活性化する。コラボによって、シリーズが古くならない。出演者のみなさんが変わらないように感じてもらうためにも、NEWなものを取り入れていくことが大事かなと思っています」(佐々木氏)

 コラボ企画の最新型と言えるのが「5Gってドラえもん?」だ。藤子・F・不二雄(藤本弘)による『ドラえもん』は、1969年に小学館の学年誌で連載開始。今もテレビアニメや映画で人気を博す。「小学生のころは世界文学を読破する読書家だった」という佐々木氏だが、『ドラえもん』と出合ってからは「『ドラえもん』ばかり読むようになって。そのまま大人になっちゃった」と笑う。

 そんな「ドラえもん愛」が仕事に生きたのが、のび太の20年後の世界を描いたトヨタ自動車の「実写版ドラえもん」(11年~)だった。佐々木氏とともに挑んだプランナーは、「白戸家」の澤本嘉光氏。国際派俳優ジャン・レノがドラえもんを、妻夫木聡がのび太を演じ、「しずかちゃんは誰?」「スネ夫は?」と話題になった。

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