※日経エンタテインメント!2020年7月号の記事を再構成

雲1つない青空の下、女優の上白石萌歌が、「♪キリン、レモン~」とカメラ目線でCMソングを歌う。冷えたボトルを口に運ぶと、炭酸が弾けて背後に黄色い気球が上昇。爽快にジャンプしながら、「♪晴れわたろうよ~」と締めくくる……。キリンビバレッジ「キリンレモン」のCMだ。

女優の上白石萌歌が、「♪キリン、レモン~」とカメラ目線でCMソングを歌うキリンビバレッジ「キリンレモン」のCM
女優の上白石萌歌が、「♪キリン、レモン~」とカメラ目線でCMソングを歌うキリンビバレッジ「キリンレモン」のCM

 同商品は、90周年を迎えた2018年から、パンクバンドのBiSHら旬のアーティストにCMソングをカバーしてもらう「キリンレモントリビュート」を展開し、若年層の支持を得た。そして20年の商品リニューアルにあたり、より幅広い世代への訴求を目指す。

 「拡大する透明炭酸市場の中で、キリンレモンが選ばれるための価値はどこにあるのか、ゼロから話し合いました。18年にも実施したリニューアルで改めて原点回帰をした健康的、高品質、爽やかといったイメージは透明炭酸に求められる基本価値でした。

 そんな中、お客様の声で印象的だったのが、『キリンレモンを飲むと元気が出る』という言葉。レモンの黄色やCMソングの弾むようなメロディーの力もあって、『気分が明るくなる』と。それこそが選ばれる理由であり、存在意義だと定義しました。そこで今回は歌の力を生かしながら、『元気になれる』という存在意義をしっかり伝えたいと思いました」(キリンビバレッジの脇山正大氏)。

 これを受けてCM制作を行ったのは、博報堂の井手康喬(やすたか)氏。18年からキリンレモンを担当している。

 「『トリビュート』がノスタルジックでカルチャー的だったとしたら、今回は前向きで“国民的”なたたずまいになるべきだろうと思いました。そこで一番似合うと考えたのが、“呼びかける”手法です。タイムラインで個人を狙うウェブ広告と違い、テレビCMは、日本中の人が一斉に見る。これからのCMは、そんな“ブロードキャスト感”が大事になるという思いもあって、カメラ目線で語りかけるように歌い、全国民にスローガンを呼びかけるようなものにしたいと思いました」(井手氏)

 コピーはリニューアルのキーワードとなっていた“晴れ感”を用いて、「晴れわたろう。」。タレントは、同社「午後の紅茶」での歌唱も話題を呼んだ上白石を選んだ。

映像にもこだわり、あえてフィルム撮影

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