新型コロナウイルスの感染拡大を受け、約500人での合唱企画を断念。代わりに約100人の「リモート合唱」をCMにして話題化させた「ポカリNEO合唱」篇。今回は、このプロジェクトを成功させたクリエイターたちと制作の裏側を紹介していく。

新ヒロインの汐谷友希と97人の学生が出演した「ポカリNEO合唱」篇
新ヒロインの汐谷友希と97人の学生が出演した「ポカリNEO合唱」篇

「ダンス」ならいろいろな人が関われる

 2015年、中条あやみが出演した「Jump」篇で企画とアートディレクションを、16年からのダンスシリーズでは企画、アートディレクションに加え、それらを統括するクリエイティブディレクションを手掛けてきたクリエイターが、なかよしデザイン(東京・渋谷)の正親篤(おおぎあつし)氏だ。

 正親氏は1970年生まれ。デザインプロダクション「清水正己デザイン事務所」、博報堂C&Dを経て、2000年に電通入社。11年、九州新幹線全線開業を近隣住民のウエーブで祝福したJR九州「祝! 九州:縦断ウエーブ」でカンヌライオンズアウトドア部門金賞、メディア部門銀賞などを受賞。13年からはキリン「のどごし 夢のドリーム」を手掛け、「バンドを組んでTHE ALFEEと演奏」「アクションスターになってジャッキー・チェンと共演」などの一般人の夢をかなえて人気を博した。また、江崎グリコ「smile.Glico」や、英会話教室「Gaba」などでも手腕を発揮してきた。

 16年、ポカリスエットのダンスシリーズを始めた経緯について、正親氏はこう話す。

 「ポカリスエットはスポーツ飲料ではないので、スポーツに限定すると、ターゲットが狭まってしまう。ターゲットを中高生としたときに、いろいろな人がいろいろなレベルで関われる『ダンス』を行うことにしました」(正親氏)

 このダンスを連動させたデジタル施策「ポカリガチダンス選手権」などを手掛けてきたのが、電通の統括クリエイティブディレクター・眞鍋亮平氏だ。

 眞鍋氏は1997年に電通入社。14年にクリエイティブディレクターとなり、同年、HIKAKINやはじめしゃちょーを起用した、YouTube「好きなことで、生きていく」キャンペーンを成功に導いた。以降、Honda「Go, Vantage Point.」「#10969GVP」、ASICS「RUN for X」、NewsPicks「経済を、もっとおもしろく。」などを手掛け、「課題解決のためならメディアや手段を問わないプランナー」を名乗っている。

 「この4年間、学生のみなさんから募集したダンス動画を編集して、テレビCMやウェブムービーにしてきました。20年は、それを合唱でやるという企画をクライアントに提案。TikTokで募集した動画をミュージックビデオにするという企画まで決まっていました。

 しかし、新型コロナウイルスの影響を受け、3月上旬に企画変更が決定。そこで通常の撮影から自撮りの手法に迅速に切り替えられたのは、ダンスシリーズで、中高生に参加してもらうノウハウがあったからだと思います」(眞鍋氏)

リモート撮影のために教則ビデオセットを用意

 もう1人、「ポカリNEO合唱」篇の功労者で注目したいのが、映像ディレクターの柳沢翔氏だ。

 柳沢監督は、1982年生まれ。多摩美術大学で油彩画を専攻した後、映像分野で活躍。近年はNTTドコモ「星プロ」シリーズや、リクルート・SUUMOの「最後の上映会」シリーズ、日清カップヌードル「HUNGRY DAYS」シリーズの「魔女の宅急便」「アルプスの少女ハイジ」などを手掛け、16年には中村倫也を主演に迎えた『星ガ丘ワンダーランド』で映画監督デビューも果たしている。

 正親氏は今回の起用について、「監督はすごく優秀な方。『人間のエネルギー』のダイレクトなところを描いてもらったらどうなるか、という点を考えて起用しました」と語る。

 柳沢監督が参加したのは、20年1月からだ。音楽プロデューサーの戸波和義氏(YUGE/大塚製薬「ファイブミニ」や資生堂「ウーノ」などのCMを担当)らと楽曲制作を進め、自ら作詞にも参加。約500人の中高生を集めて合唱する予定だったが、新型コロナの影響を受け、正親氏らと「自撮り」での企画を大塚製薬に提案した。大塚製薬の上野隆信氏は、そのときのことをこう振り返る。

 「リモートで撮影するのが初めてだったので、編集を見るまではすごく不安でした。それしか方法がなかったということもありますが、正親さんら5~6年一緒にやってきたクリエイターのみなさんのことを信じて、GOを出しました」(上野氏)

 自撮りでは、監督がカメラマンにカメラワークを指示することも、中高生に演技指導を行うこともできない。そこで柳沢監督らは、撮影時に意識してほしいことをまとめた教則ビデオセットを準備。中高生たちにはそれを事前に見て、撮影に臨んでもらったという。

 「3月中旬に、それぞれに撮影していただいた動画を集めて、リモートで確認作業を行いました。素材数が多いので取捨選択していくのが大変でしたが、もともと中高生のポテンシャルを感じていたので、期待通りでした」(正親氏)

 こうして企画変更から約1カ月のスピードで「ポカリNEO合唱」篇が完成。リモート試写を見た上野氏は「実際に編集されるまで、どのようなCMになるのか想像しづらかったのですが、それゆえ編集したものを初めて見たときには、その熱量に心を動かされました」と語る。

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