今春、約100人の中高生が自撮りで撮影を行って話題となった、大塚製薬ポカリスエットの「ポカリNEO合唱」篇。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、もともと企画していた約500人での合唱企画を断念。代わりに約100人の自撮り撮影での合唱をCMにして話題化させたCMだ。今回は、コロナ禍でのCMの状況や、1988年の宮沢りえ出演作から2020年の汐谷友希出演作まで、名作を生み出し続けてきたポカリスエットCMの歴史を振り返る。

コロナ渦で増えた「リモートCM」。その先駆けとも言えるのが、3月に撮影し、4月に放送された大塚製薬ポカリスエットの「ポカリNEO合唱」篇
コロナ渦で増えた「リモートCM」。その先駆けとも言えるのが、3月に撮影し、4月に放送された大塚製薬ポカリスエットの「ポカリNEO合唱」篇

コロナ渦で増えた「リモートCM」

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、今春のテレビCMは平時と異なる状況となった。まずは企業が出稿を中止・自粛したことによる、ACジャパン(旧・公共広告機構)のCMの増加だ。CM総合研究所の発表によると、政府が全国の学校に臨時休校を要請した2月27日を境にACのCMが急増。4月1日、2日は110回を数え、翌日から減少するも、7日の緊急事態宣言発令を機に再び増加に転じたという。

 コロナ禍で目立ったのが、せきエチケットなどを訴求する政府広報のCMや、「Zoom」などのビデオ会議アプリのCM、そして「リモートCM」とも言えるCM群だ。

 例えば、トヨタ自動車「トヨタイムズ」シリーズは、“編集長”の香川照之がパソコンの前に座り、各国のトヨタ社員にリモート取材。ジャパネットたかたは、さだまさしや西川貴教、高橋みなみらに自撮り形式で出演してもらい、「今だから気付けること」をキーワードにCMを展開した。

 また、コンピレーションCD『ラブとポップ~大人になっても忘れられない歌がある~mixed by DJ和』(SMEJ Associated)のCMには、「YouTuber芸人」として人気のフワちゃんが登場。リモートで演出を受けながら、BoAやm-floのパロディーを自宅で撮り切り、ネットで話題になった。さらにDMM.com「DMM英会話」のCMでは、おぎやはぎの矢作兼がオンラインで外国人講師に英会話を学ぶ内容を放送。実は5年以上前に撮影された過去作ながら時流にマッチし、5月前期の銘柄別CM好感度ランキングで2位に浮上した。

 これらに先んじるように登場して注目を集めたのが、ポカリスエット「ポカリNEO合唱」篇だ。5月前期銘柄別CM好感度で13位に入るヒットとなった。

美少女路線から多様化へ

 ポカリスエットといえば、これまで多くの人気作を放ってきたCM界の優良銘柄だ。そこで今回は、その40年におよぶ歴史を振り返ってみたい。

 1980年に「汗の飲料」をコンセプトに開発・発売されたポカリスエットは、初期CMでは外国人モデルや女優を起用していた。変化したのは、86年。「第1回ポカリスエット・イメージガール・コンテスト」で約1万2000人の中から選ばれた森高千里と糸井重里がコミカルな掛け合いを見せるCMが話題となり、87年に累計販売本数30億本を達成した。

 さらに特大ヒットとなったのが、88年にスタートした宮沢りえ出演シリーズだ。CMソング『Co-Colo 上天気』(MICK BRONSNAN)をバックに、宮沢がサーフィンや水芸に挑戦。同年の作品別CM好感度ランキングでサーフィン篇が2位、水芸篇が10位に輝いた。

 美少女路線は続き、91年からは一色紗英を起用。南の島や温泉を楽しむ姿を爽やかに描いたシリーズが人気となり、バックに流れる織田哲郎の『いつまでも変わらぬ愛を』もヒット。93年はZARD『揺れる想い』、94年はDEEN『瞳そらさないで』と音楽コラボ路線で成功を収める。93年、累計発売本数は100億本を突破した(340ml缶換算)。

 95~96年に中山エミリを起用した後は、美少女路線から多様化。金城武や森且行を起用した男性路線や、YUKI、ポルノグラフィティ、福山雅治が歌うアーティスト路線などが登場する。また07年からは、SMAPを起用。老人たちと空き地でラグビーを繰り広げる作品などを放送し、08年の作品別CM好感度8位に入った。

 10年代に入って起用したのは、北野武。「発汗により失われた水分・電解質を速やかに補い、渇いた体を潤す健康飲料」という商品の原点を訴求するストイックなシリーズを展開し、それまでの爽快路線から大きく舵(かじ)を切った。12年からはダルビッシュ有や長友佑都を起用したスポーツマン路線をスタートさせ、引き続き機能訴求に力を入れた。

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