長瀬智也、清野菜名を起用し、3年目を迎えたCMシリーズ「夢見る小学生」が好調なオープンハウス。銘柄別好感度ランキングでは2020年1月後期に9位、2月前期に8位にランクインした。今回は田中みな実らを投入した2年目以降の展開を振り返るとともに、同社にとっての「CM効果」などを聞く。
2018年に始まると、同年度のCM好感度ランキング「住宅・建設」業類で早速4位に入るなど、視聴者の人気をつかんだ「夢見る小学生」シリーズ。2年目となる19年1月からオンエアしたのは「保健室篇」だ。
ケガをした長瀬君に包帯を巻きながら、保健室の先生が優しく話しかける。「戸建てが夢なんだ。誰と住むの? キッチンはどうするの?」。すると、長瀬君は「そんなことより、リビング、ドーン! 車庫、バーン!」と答えて走り去る。実は清野ちゃんが先生に探りを入れてもらっていたようで、先生は隠れていた清野ちゃんに「あいつ、ない(あいつ、ダメだ)」と言い放つ――という内容だ。先生役に、フリーアナウンサーの田中みな実を起用した。
「思ったことを言ってくれる人が欲しかったんです。その頃、田中さんは表裏のあるキャラクターでブレイクしていたんですけど、CMで表と裏を描くと、腹の内を明かしているようでオープンに見える。それがオープンハウスのクリーンさにつながるんじゃないかと考えて、田中さんにオファーしました」(博報堂のCMプランナー・吉兼啓介氏)
また19年は「お付き合い篇」も放送。駅前の土地を見学に行きたい長瀬君が「付き合ってくれない?」と言うと、清野ちゃんが勘違い。顔を赤らめながら、「……考えとく」と走り去る。
そして20年1月からオンエアしたのが「下校篇」だ。学校帰りの長瀬君と清野ちゃんに「時代が変わっても、価値が変わらないものは?」と田中先生が質問。「愛だと思います」と答える2人に、「駅近の土地」とシビアな現実を教える。
「現実を突きつけられた2人の絶望した表情を描くと面白いと思ったのですが、愛を否定したくはない。小島淳平監督も同じ意見だったので、どう着地させるか、かなり話し合いました。そして最終的に、愛を否定せずにうやむやにして、2人が路頭に迷って終わるという形にしたんです。
このことは、長瀬さんと清野さんにもきちんと説明して演じていただきました。そうしたら長瀬さんが『空飛ぶタイヤ』ばりの苦悩の表情を見せてくださって(笑)。『下校篇』は、そのうやむや感が面白いものになったんじゃないかと思います」(吉兼氏)
フィルムで出す「昭和感」
シリーズには、長瀬自身のアイデアが多く生かされているという。
「ラガーシャツを着て、ジャイアンのようなオラオラキャラにしたのも、髪型をオールバックにしたのも長瀬さんのアイデア。ランドセルのベルトをギリギリまで短くして、パツパツにしたのも長瀬さんです(笑)。長瀬さんは、本番でもテイクごとに表情を変えられるので、面白くて。監督がそれを面白がって、テイクを重ねているところがありますね。
清野さんは小学生を演じるためにほぼノーメークで、衣装は実際に売られている子ども服を着てもらっています(笑)。さらに、教室に貼り出してある絵や習字は、実際に小学生に書いてもらったもの。長瀬君のフィクション性が高いので、周りはリアルにした方が面白いと思っています」(吉兼氏)。
「リアル」の追求のため、日ごろから意識していることもあるという。
「近所の公園で10歳くらいの子に話しかけて、ジャングルジムに一緒に登りながら話すんです(笑)。『学校、楽しい?』とか『好きな子、いるの?』とか。そうすると最近の子は早熟で、異性と付き合って、デートしていたりする(笑)。それを恥ずかしげもなく話してくれたりして、オープンマインドなんですよね。そういうヒアリングが、長瀬さんと清野さんの関係性や、サブキャストの同級生のキャラクターに生かされています」(吉兼氏)
映像や音楽で意識しているのは「昭和感」だ。
「個人的にですけど、『夢を持つ』ということが、一昔前の価値観になりつつあると思っていて。その昭和臭さみたいなものを映像に出したいと、あえてフィルムで撮っています。音楽はオリジナルですが、イメージしたのは『蒲田行進曲』。それもちょっと古い感じが、逆に新しく見えるといいなと考えています」(吉兼氏)
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