CM好感度ランキングで4位(12月前期銘柄別)にランクインしたリクルート「ホットペッパーグルメ」のアフレコCM。12年ぶりの復活の裏側を聞いた前回に続き、今回は、2002年からのシリーズの歴史と、生みの親である希代のクリエイティブディレクター・山崎隆明氏にスポットを当てる。

山崎氏が自らアフレコするようになったのは、プロのナレーションがあふれるCMの中で異物感を出し、視聴者に振り向いてもらうため。2007年にはSMAPのライブ映像にアフレコした番外編も話題になった
山崎氏が自らアフレコするようになったのは、プロのナレーションがあふれるCMの中で異物感を出し、視聴者に振り向いてもらうため。2007年にはSMAPのライブ映像にアフレコした番外編も話題になった

 一般社団法人ACC(旧・全日本シーエム放送連盟)が毎年開催しているACC TOKYO CREATIVITY AWARDSには、CM史に残る特に素晴らしい受賞作を“殿堂入り作品”として選考した「ACC パーマネントコレクション」がある。例えば、小学館「ピッカピカの一年生」(1984年)やJR東海「クリスマス・エクスプレス」(89年)、サッポロ黒ラベル「温泉卓球」(2000年)、ライフカード「カードの切り方が人生だ」(06年)など、まさにエポックメイキングな名作が選ばれてきた。その1つに含まれているのが、リクルート「ホットペッパー」のCMだ。シリーズが開始された02年の「たべました」「スゴいやん」「腹立ってきた」の3篇に加え、「まだ伴奏篇」も(06年)も殿堂入りを果たしている。

 ホットペッパーは、2000年に無料の「クーポンマガジン」として創刊され、新潟・長岡・高松を皮切りに全国展開するなかで、CM放送を開始した。アフレコCM第1弾としてオンエアされた「たべました篇」は、クラシックカーの中で繰り広げられる外国人カップルの会話劇。ケンカの後なのか、男性の口の周りに血のような液体がついているという設定だ。

 「スパゲッティ食べたでしょ?」
 「食べてないよ!」
 「ケチャップついてるやん」
 「(ハンドルをたたいて)……食べましたっ!」
 「私のクーポン券使って?」
 「使った……ような気がします。クーポンマガジンのホットペッパー」

 意外性に満ちた吹き替えがウケて大ヒット、シリーズ化した。「まだ伴奏篇」は、中世ヨーロッパの洋館が舞台。音楽家のピアノ伴奏に合わせて、男性が緊張気味に歌い始めるというものだ。

音楽家 (ピアノを弾く)
 「♪居酒屋クーポン」
音楽家 「あ、まだ伴奏です」
「あ、すいません」
音楽家 「はい、ここから!」
「♪居酒屋クーポン」(最後は不自然に音程が上がる)

 格調高い映像に、「居酒屋クーポン」という言葉を重ねた点が面白い。さらに06年からは、SMAPの少年時代の映像や、大人になってからのライブ映像にアフレコした「ホットペッパー.jp」のCMも放送。07年までに39作品ものアフレコCMが制作された。

 これらすべてのクリエイティブディレクション、プランニング、そして声優を自ら務めてきたのが、山崎隆明氏(ワトソン・クリック)だ。

 山崎氏は、日本大学芸術学部を卒業後、1987年に電通入社。電通関西支社時代に、沢口靖子が国会議員を演じた大日本除虫菊の「タンスにゴンゴン」や、大滝秀治が縁側で岸部一徳に「つまらん!」と一喝する同「水性キンチョール」、本木雅弘が奇抜なヘアスタイルを見せたマンダム「GATSBY」などユーモラスなCMの傑作を生み出した。

 一方で、スタイリスティックスの『愛がすべて』のメロディーに乗せて木村拓哉が軽やかに踊るマンダム「GATSBY」のようなスタイリッシュなCMや、ジャミロクワイやボン・ジョヴィを起用した日清食品「カップヌードル」のような歌モノCMでも才能を発揮する多才ぶりを見せている。

 歌モノと言えば、自ら作詞・作曲したSMAPコンサートジャンクション曲『チョモランマの唄』、関ジャニ∞のキャンディークラッシュCMソング『Candy My Love』や木村カエラが「♪ホットペッパーピップペッパッピ~」と歌う『ホットペッパーの唄』がある。『チョモランマの唄』はSMAP全楽曲でファン投票8位になり、最後のベストアルバムに収録され、『ホットペッパーの唄』は、09年7月度の「着うた」ランキングで1位になり、50万ダウンロードを突破するヒットとなった。

 2009年にワトソン・クリックを設立してからは、天才子役・寺田心が菌の子ども“リトルベン”を演じたTOTO「ネオレスト」、能年玲奈から改名した “のん”が無言でカメラを見つめる「LINE mobile」、草彅剛と香取慎吾が薄毛に悩むミノキ兄弟を演じる「アンファースカルプD ミノキ5」など、コンスタントにヒットを連発。また、香取慎吾、草彅剛、稲垣吾郎による「新しい地図」の立ち上げ時には、多田琢、権八成裕といったCM界屈指のクリエイターとともにブランディングを手掛けた。

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