「♪とろとろ とろッピ~ レンジで10秒~」という歌に合わせ、電子レンジの前で踊る女の子。レンジの中ではチーズがとろり溶けていく。10秒後、チン!と鳴ると、女の子がどや顔でポーズ。家族で食べて笑顔になる……。「カワイイ!」「癒やされる」と話題になった雪印メグミルク「6Pチーズ」のCMだ。
「6Pチーズは1954年に現在の形で発売されたロングセラー商品で、メインの顧客層は50代~60代。30代~40代の子育て世代に親しんでいただくことが1つの課題でした」(雪印メグミルクの水田雅也氏)
2016年から同製品のCMに取り組むのは、博報堂のクリエイティブディレクター・丸田昌哉氏とコピーライターの石下佳奈子氏だ。
「ブランドの若返りを図りたいということだったのですが、広告でただ若いイメージを作るだけでは、買う理由にならない。6Pチーズの新しい食べ方や楽しみ方を提案したほうが買ってもらえるのではないかと思いました」(丸田氏)。その考えの下、6Pチーズにさまざまな食材をのせてキャラクターを作る「ママとつくロッピー」(16年)や、フライパンで焼いて食べる「焼きロッピー」(17年)など、200近いレシピをCMやウェブで提案してきた。
「しかし今は『時短』『簡単』が求められる時代。お客様から『フライパンもハードルが高い』という声があり、19年は『より簡単でおいしいレシピを』とオーダーさせていただきました」(水田氏)
この難題に応えて編み出されたのが、のりの上に6Pチーズをのせてレンジで10秒温めるだけの「とろッピ~」。「温めることでチーズの香りや味が引き立ち、軟らかくて不思議な食感も楽しめる。のりの風味とチーズの相性も良くて、こんなに簡単でおいしい食べ方があったのかと思いました」(雪印メグミルクの太田愛氏)。
CMでは、画面の左半分でその簡単調理法を、右半分では「待ちきれない!」と言わんばかりに踊って待つ子どもを描こうと考えた。
「何度もオーディションをして、出会ったのが、5歳の本保佳音ちゃんでした。カンが良くすぐに振りを覚えて、踊り続ける体力もある。物おじせず、楽しんで踊ってくれるところも良かった」(丸田氏)
雑念を持たずに表現を追求
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