服や楽器が並んだブックオフの店内。店長役の寺田心が、ある男性客に話しかける。「今、こう思いましたね? ブックオフなのに本ねぇじゃーん! フィクションは本だけにしとけよ!…って」。男性客は一瞬あぜんとするも、「さすが心を読める心くん!」と笑顔で答える…。天才子役の振り切った演技が話題となったブックオフコーポレーションのCMだ。
「中古書籍の売買からスタートして、2020年で30周年。『本を売るならブックオフ』というイメージが定着していると思いますが、ここ数年、洋服やおもちゃ、家電なども扱う店舗が増えています。しかし、調査によると、その認知度は3割程度。今回は『本だけじゃないブックオフ』を訴求したいと思いました」(ブックオフコーポレーションの千田竜也氏)
これに応えたのは、ティー・ワイ・オー(TYO、東京・渋谷)のクリエイティブディレクター・松井一紘氏。2017年からブックオフのCMを手掛けている。
「服や楽器なども扱う幅広い店だと普通に訴求しても、たぶん話題にならない。それで一度『本屋』と定義してみようと。本屋が服や楽器を売っていると考えると、冗談というか、フィクションみたいだなと思いました」(松井氏)
こうして考えたのは、店に来た主婦が「冗談よしてや! ブックオフが服とか売るなんて、フックオフやん!」と笑う企画と、男性客が「ブックオフなのに本ねぇじゃーん!」と叫ぶ企画。それに対して「いけないの~? 本屋が服とか売っちゃ~」と涙ぐむ店長の姿を描こうと考えた。
「『いけないの~?』と誰に言ってもらったら面白くなるかと悩んでいた時に、年末の『ガキの使いやあらへんで!』で優しい毒舌カウンセラーを演じている心くんを見て(笑)。子どもらしい『子ども店長』はトヨタ自動車さんのCMで以前やられていたので、差別化するためにも、ちょっとイカレた、人の心を読める子ども店員にしました」(松井氏)
こうして元の企画2篇に、心を読むバージョンの2篇を加えた4篇を撮影。監督は「カレーメシ」「さけるグミ」などを手掛けるTYO所属の佐藤渉氏が担当した。
「佐藤監督が本番前に『今まで見たことがない心くんを見たい。イメージをぶっ壊してね』と伝えたんです。そうしたら一発目であの演技が出てきて、一堂びっくり。現場がどよめいて、『天才だ!』と思いました」(松井氏)
ヒットの要因はウェブ拡散
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