リニューアルしたのに「変わっていない」。マツコデラックスを起用したテレビCMで、2019年9月の銘柄別CM好感度TOP10に入った亀田製菓。その発想の原点は、社内、そしてCM企画中にも出た「どう味が変わったのか分からない」という“本音”だった。
子育て中の“ママツコ”が、自転車に子供を乗せて走っていると、「ハッピーターンが変わりました」との声が聞こえる。一度通り過ぎたものの、「ターンよターン。ハッピーターン」とダジャレを言いながら引き返し、「食べたわよ。変わってないわよ」と辛口コメント。「変わりました」と主張する声に対しても、「変わってないわよ」と反論する……。マツコデラックスを起用した亀田製菓「ハッピーターン」のCMだ。
「ハッピーターンはおせんべい。でもお客様はスナック菓子だと思っていて、なかなか売り場にたどり着けないんです。お客様との接点を変えられないかと考えていた時に、ちょうど商品のリニューアルがあって。これまでとは違うリニューアルの見せ方をと考えました」(亀田製菓の早坂明氏)
リニューアルは、「お客様の声を参考に“コク旨”のおいしさをシャワーのようにかけて仕上げた」(早坂氏)というもの。「ただ、社内の多くの人間から、よく分からないという声があって」と笑う。その繊細な変化を受けて、このリニューアル訴求キャンペーンに挑んだのが、ADKマーケティング・ソリューションズの玉川健司氏だ。
「最初は『ハッピーターン革命!』みたいな定番の企画を提案したのですが、話し合いを重ねるうちにもっと本音の、とがったものを求められているなと。私自身、実際に商品を試食したら、味の変化が分からなくて(笑)。『だったらもう、変わってないって言いましょうよ!』と本音で提案をしたら、『面白い』とその場で決まりました」
消費者が感じるかもしれない「変わってない」という声を、忖度(そんたく)なしのコメントで人気を集めるマツコデラックスに代弁してもらうことに。その撮影現場も“本音”を軸に進められた。制作陣の考えを押しつけるのではなく、現場で話し合って企画をブラッシュアップしたという。
「例えば、CM内には『ターンよターン』というせりふがあります。当初は、15秒という尺にすべてを収めるために、このせりふは早く言ってもらおうと思っていたんです。でも、マツコさんにいろいろ試していただくと、ゆっくりのバージョンが面白かった。そこで、他のせりふを急きょ削り、それでも入りきらなかったので、最終的に亀田製菓のCMでは初めて『♪亀田のあられ、おせんべい』というジングルの声も消し、音楽だけにしました」(早坂氏)
シュールな静けさも印象に
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