飛行機の中、ジュースを飲もうとカップを口に近づける男性。その時、隣の女性がリクライニングボタンを誤操作し、男性のシートがドンッと後ろに倒れてしまう。男性はジュースをかぶってびしょぬれだが、平然と音楽に酔いしれる……。ユーモラスな展開で人気の「Spotify(スポティファイ)」のCMだ。
Spotifyは、音楽好きのプログラマーが創業したストリーミング音楽配信サービス。現在79カ国でサービスを展開し、2億1700万人のユーザーを抱える。日本には2016年に上陸、これまでに杏や清水尋也を起用したCMを放送してきた。
「Spotifyのメインターゲットは、コアな音楽ファン。今回は一般への認知を高めるとともに、音楽ファンの共感をより強く得ることを狙いにしました」(Spotify Japanの井原舞氏)
これを受けて企画を手掛けたのは、電通の鈴木晋太郎氏。花王「アタックZERO」やUQモバイルなども手掛けるCMプランナーだ。
「Spotifyは、音楽を愛する人が作り出した、音楽好きのためのサービス。タワーレコードの『NO MUSIC, NO LIFE.』のように、『音楽こそ人生』と思っているような音楽好きが共感できるCMにしたいと思いました。もう1つ意識したのは、Spotifyのブランドイメージ。音楽に真摯なだけでなく遊び心があると感じていたので、ウイットやユーモアを生かして音楽愛を表現したいと考えました」(鈴木氏)
こうして生み出した企画が、「音楽を聴いている場合ではない状況でも、音楽を求める人を描く」というもの。当初は、彼氏の浮気現場に遭遇した女性や、ゾンビに取り囲まれた人が音楽を聴くというアイデアを提案した。
「面白い企画でしたが、みんなが『あるある』と思える身近なシチュエーションのほうが共感してもらえるのではないかと。さらにアイデアを出していただき、私たちが一番共感できてクスッと笑えたのが、リクライニングシートを倒されるという企画でした」(井原氏)
こうして制作した「#音楽さえあればいい『飛行機編』」を放送すると、CM総合研究所発表の6月度銘柄別好感度トップ10の8位にランクイン。6月前期作品別では3位に食い込む好成績を残した。
目立った海外CMっぽさ
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