※日経エンタテインメント! 2019年9月号の記事を再構成

飛行機の中、ジュースを飲もうとカップを口に近づける男性。その時、隣の女性がリクライニングボタンを誤操作し、男性のシートがドンッと後ろに倒れてしまう。男性はジュースをかぶってびしょぬれだが、平然と音楽に酔いしれる……。ユーモラスな展開で人気の「Spotify(スポティファイ)」のCMだ。

リクライニングシートを倒されるというアイデアは、電通チームの実体験から生まれたもの。男性を演じたのは、役所広司の「ワイ・ケイ事務所」に所属する俳優・管勇毅(かんゆうき)
リクライニングシートを倒されるというアイデアは、電通チームの実体験から生まれたもの。男性を演じたのは、役所広司の「ワイ・ケイ事務所」に所属する俳優・管勇毅(かんゆうき)
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 Spotifyは、音楽好きのプログラマーが創業したストリーミング音楽配信サービス。現在79カ国でサービスを展開し、2億1700万人のユーザーを抱える。日本には2016年に上陸、これまでに杏や清水尋也を起用したCMを放送してきた。

 「Spotifyのメインターゲットは、コアな音楽ファン。今回は一般への認知を高めるとともに、音楽ファンの共感をより強く得ることを狙いにしました」(Spotify Japanの井原舞氏)

 これを受けて企画を手掛けたのは、電通の鈴木晋太郎氏。花王「アタックZERO」やUQモバイルなども手掛けるCMプランナーだ。

電通のCMプランナー、コピーライターの鈴木晋太郎氏。2007年、電通入社。情報システム局、営業局を経て現職。16年からの湖池屋のリブランディングプロジェクトで中心的役割を担い、「PRIDE POTATO」「スゴーン」などのネーミングからCMまで担当。現在は花王「アタックZERO」、「日清焼そばU.F.O.」(輝夜月/武田真治)、UQモバイル、リクルート「タウンワーク」、大塚製薬「SOY JOY」などを担当。TCC新人賞ほか受賞多数
電通のCMプランナー、コピーライターの鈴木晋太郎氏。2007年、電通入社。情報システム局、営業局を経て現職。16年からの湖池屋のリブランディングプロジェクトで中心的役割を担い、「PRIDE POTATO」「スゴーン」などのネーミングからCMまで担当。現在は花王「アタックZERO」、「日清焼そばU.F.O.」(輝夜月/武田真治)、UQモバイル、リクルート「タウンワーク」、大塚製薬「SOY JOY」などを担当。TCC新人賞ほか受賞多数
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 「Spotifyは、音楽を愛する人が作り出した、音楽好きのためのサービス。タワーレコードの『NO MUSIC, NO LIFE.』のように、『音楽こそ人生』と思っているような音楽好きが共感できるCMにしたいと思いました。もう1つ意識したのは、Spotifyのブランドイメージ。音楽に真摯なだけでなく遊び心があると感じていたので、ウイットやユーモアを生かして音楽愛を表現したいと考えました」(鈴木氏)

 こうして生み出した企画が、「音楽を聴いている場合ではない状況でも、音楽を求める人を描く」というもの。当初は、彼氏の浮気現場に遭遇した女性や、ゾンビに取り囲まれた人が音楽を聴くというアイデアを提案した。

 「面白い企画でしたが、みんなが『あるある』と思える身近なシチュエーションのほうが共感してもらえるのではないかと。さらにアイデアを出していただき、私たちが一番共感できてクスッと笑えたのが、リクライニングシートを倒されるという企画でした」(井原氏)

 こうして制作した「#音楽さえあればいい『飛行機編』」を放送すると、CM総合研究所発表の6月度銘柄別好感度トップ10の8位にランクイン。6月前期作品別では3位に食い込む好成績を残した。

目立った海外CMっぽさ

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