※日経エンタテインメント! 2019年6月号の記事を再構成

話題のCMを取り上げ、その企画の狙いや制作の裏側を掘り下げる「CMフォーカス」。今回は、木村拓哉を新たに起用したサントリービール「金麦」を取り上げる。同CMは2019年3月前期の作品別CM好感度ランキングで6位に。定番のロングセラー商品のCMがトップ10に入ることは珍しい。

「日本の食卓に新発売。」と訴えた、「新しい金麦」編。日本の食卓を象徴し、金麦に合う料理として、きんぴらごぼうを推し出した
「日本の食卓に新発売。」と訴えた、「新しい金麦」編。日本の食卓を象徴し、金麦に合う料理として、きんぴらごぼうを推し出した

 木村拓哉が金麦を手に取り、パッケージに書かれた文字を読む。「新しい金麦。よりはっきりとした麦のうまみと澄んだ後味。なるほど。これ、きんぴらに合うな……」。「あと、アサリバターとか」と声がして振り返ると、舞台は一転してスーパーに。声をかけた試食販売員に「確かに!」と同調する――2月末から放送されて話題を呼んだ、サントリービール「金麦」のCMだ。

 2007年の発売以来、檀れいが夫を待つ妻を演じて好評を博してきた金麦CM。しかし発売から12年が経ち、顧客のライフスタイルも変化している。「共働き夫婦が増えた今の時代に合わせ、初めて中味、パッケージ、コミュニケーションのすべてを刷新しました」(サントリービールの中村勇介氏)。広告のクリエーティブディレクションを担当したのは黒須美彦氏(クロロス)。07年の立ち上げから金麦ブランドのCMを手がけている。

 「発売当時ターゲットにしていたのは50歳前後の人。今回は30代~40代にフォーカスを当てたいという要望だったので、檀さんシリーズの、やや昭和を感じさせる懐かしい雰囲気はリセットしたほうがいいかなと思いました。そして、ビッグなリニューアルにふさわしい人は誰か、議論を重ねて名前が出たのが木村さん。最近はバラエティなどでフランクな姿も見ることができて、新ジャンルで親しみやすい、金麦に意外だけど似合うんじゃないかと思いました」(黒須氏)

 そして「見慣れない、カジュアルなシーンでの木村さんを撮りたい」(黒須氏)との思いから、スーパーを舞台に設定。音楽には小沢健二の95年のヒット曲『強い気持ち・強い愛』のイントロ部分を使用している。

 「檀さんシリーズの『ビタースウィート・サンバ』は、ラジオで『オールナイトニッポン』を聴いていた世代のテーマ曲。ターゲットを30代~40代にするなら、その世代に刺さる曲にしたほうがいいと思いました。今回、小沢さんが企画に賛同して、金麦用の特別マスタリングをしてくれたんですよ。もとの楽曲の音を整理して、弦楽器の音を強調している。『澄んだ後味』と呼ぶ金麦の透明感に合う出だしになりました」(黒須氏)

 こうして冒頭の「新しい金麦」編を放送すると、3月前期の作品別CM好感度ランキングで6位に。定番のロングセラー商品のCMがトップ10に入ることは珍しく、「お客様からの声も過去最高クラス。ものすごい反響でした」と中村氏は喜ぶ。また、3月からは木村が羽根付き餃子作りに挑戦し、金麦とともに食する「幸せな手料理」編を放送。この効果で3月度の業類別好感度「アルコール」で1位を獲得した。

「金麦らしく新しく」に注力

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