ディープラーニング(深層学習)に代表されるAI技術の活用ビジネスで、米国はもとより中国に比べて大きく出遅れている日本。「世界で勝てる感じがしない、敗戦に近い」という松尾豊・東京大学大学院特任准教授の強い危機感をきっかけに、日本のAIビジネスの現状をレポートした特集の第4回。松尾氏は日本の産業競争力を強化するために、ディープラーニング人材の育成に乗り出した。
※本特集は書籍『AI後進国ニッポンが危ない! 脱出のカギはディープラーニング人材の育成』から再構成した。


2018年3月下旬、キヤノン電子の酒巻久社長に話を聞く機会があった。酒巻社長はキヤノン時代に、アップル共同創業者でスマートフォンを世に送り出した故スティーブ・ジョブズ氏と一緒に仕事をしたり、1980年代後半から90年代初めにかけて、パソコン事業で当時としては斬新な製品を市場に投入したりしたアイデア豊富な技術者であり、キヤノン電子の収益を大幅に改善した経営のプロである。
その酒巻社長は「日本は第2次産業では完璧だし、この産業は日本人に向いていると思う。日本の学校教育も第2次産業の基本的なところに力を入れている。ところが、(AIなど)ソフトウエアの開発には向いていないし、日本の風土としてソフトウエアの価値を認めていない。その点、米国はソフトウエアの価値を認めている。日本は完璧主義が妙に染みついてしまって、何でも100%の品質でないと出せない。ところが、ソフトウエアはある程度完成したら、世の中に出してバグを潰していくという考え方ができるかどうかだ。だから日本はAIに向かないのかもしれない」と話す。
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