「人気パッケージ比較調査」の番外編4回目は、書籍『AIとカラー化した写真でよみがえる戦前・戦争』 (庭田杏珠、渡邉英徳・著、 光文社新書)を取り上げる。戦前から戦後の白黒写真を、AI(人工知能)と当事者への取材や資料を基に彩色、カラー化した350枚の写真を収めた。カラー化によって写っている過去の人やモノが一斉に動き出し、語りかけてくる。カラーと白黒では大きくイメージが異なる。AIの進化はパッケージのデザイン表現にも影響を与えそうだ。
カラー写真に慣れ親しんだ現代の人間が白黒写真を見ると、どうしても「古臭い」「遠い昔のこと」「歴史の中の話」といった印象を持ってしまい、自分のいる今とのつながりを感じにくい。ところがカラー化されることで、そうした状況は一変し、身近に感じるようになる。
著者の1人、庭田杏珠氏は広島県生まれ。東京大学に在学し、アートやテクノロジーを生かした戦争体験者の「想い・記憶」の継承に取り組む。もう1人の著者の渡邉英徳氏は東京大学大学院情報学環教授。情報デザインとデジタルアーカイブによる記憶の継承のあり方について研究している。2016年より白黒写真のカラー化を始めた。
AIの領分、人の領分
「AIは、現在のカラー写真とそれを白黒に変換したものをセットで学習する。その学習を基に白黒からカラーを推測する。だからどの写真にも普遍的に写っているモノについては、AIによるカラー化の得意分野だ」と渡邉氏は言う。例えば空や海、山や人の肌などがこれに当たる。こうしたものを、人間が自然な色合いに感じるように色を付けるのは得意だ。一方で、服の色などは、赤い服でも緑の服でも白黒化するとすべてグレーになってしまう。
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