アサヒビールは、酒の飲み方の多様性を提案する「スマートドリンキング(以下、スマドリ)」の考え方から、アルコール度数1%未満の商品を指す飲料として「微アルコール(以下、微アル)」という新しいカテゴリーを創出。その第1弾として投入したのが、アルコール分0.5%のビールテイスト飲料「アサヒ ビアリー」だ。

 「アサヒ ビアリー」は首都圏・関信越エリアの1都9県で2021年3月30日に先行発売し、6月29日から全国販売を開始した。サッポロビールもアルコール分0.7%のビールテイスト飲料「サッポロ The DRAFTY(ザ・ドラフティ)」を9月14日に発売しており、微アルという新しい市場を開拓しようとしている。そこで今回は微アルのビールテイスト飲料であるアサヒ ビアリー(A)と、サッポロ The DRAFTY(B)のパッケージデザインを比較した。

 なお、アサヒ ビアリーは8月上旬製造分から順次、中味とパッケージを当初の発売時からリニューアルしているが、今回の調査は当初のパッケージで進めた。リニューアル後のパッケージでは、全体的なイメージは踏襲しつつも、「微アル」マークと「おいしさUP」の帯、「スマドリ」のロゴを追加している。

初めて“ビール”を経験した顧客も

 まず、AとB「どちらの商品を買いたいか」(Q1)と聞くと、全体ではAが74.7%、Bが25.3%だった。Aは、一度ビールを醸造した後にアルコールを除去するという製造手法を採用し、ビールらしい本格的な味わいを実現。20年に約5億円を投じて脱アルコール製法の蒸留設備を福島工場(福島県本宮市)に新設した。さらに、21年にも約5億円をかけて吹田工場(大阪府吹田市)にも設備投資を行った。これにより脱アルコール商品の製造能力は2倍になったという。

 発売後は大きな反響があり、それに伴い関連商品も追加した。6月29日には、微アル第2弾としてフルーティーな香りとコクが特徴の「アサヒ ビアリー 香るクラフト」の先行発売を1都9県で開始し、9月28日に全国発売した。9月14日には業務用向けの小瓶334ミリリットル、9月28日に500ミリリットル缶も発売した。

 9月28日からは、微アルの新ブランドとしてアルコール分0.5%のハイボール「アサヒ ハイボリー」と、アルコール分3%の「アサヒ ハイボリー 3%」を全国発売。アサヒビールは今後も微アルのカテゴリーの拡充に力を入れていく予定だ。

左から、リニューアル後のアサヒ ビアリー350ミリリットル缶(21年8月上旬製造分から順次リニューアル)、9月28日に発売した500ミリリットル缶、9月14日に発売した小瓶334ミリリットル、9月28日に発売した微アルの新ブランド「アサヒ ハイボリー」
左から、リニューアル後のアサヒ ビアリー350ミリリットル缶(2021年8月上旬製造分から順次リニューアル)、500ミリリットル缶、小瓶334ミリリットル、微アルの新ブランド「アサヒ ハイボリー」

 Aの発売に当たり、アサヒビールは2つのターゲット層を設定した。1つは、「お酒と上手に付き合っていきたい」と考えている層。40代が中心だが、20~60代まで幅広い年齢層がいる。例えば「ほどほどに酔いたい」という理由も年代によって様々で、若い層は「あまり酔いたくはない」「顔が赤くなるのを避けたい」などの理由を挙げ、高齢層は「昔と違って体力がないため酔いたくない」などの理由があるという。もう1つが、「自分の時間を楽しみたい」「心地よい生き方をしたい」と考える20~30代前半の若者層だ。ただし、2つの層には「ビールが大好き」という共通点があるようだ。

 発売後に意外だったのが、2つの層に加えて飲酒習慣がなかった層も購入してくれたこと。「発売後は、弊社に対して『ビアリーが私の初めてのお酒になった』といった声を届けてくれるお客さまもいた。40~50代の主婦の方が中心で、夫婦で一緒に晩酌を楽しんでくれているようだ」(アサヒビールのマーケティング本部 新価値創造推進部担当副部長の福冨貴之氏)。初めての酒にビアリーを選んだ理由は、「甘味の強いサワーやカクテルなどと比べて、どんな食事(晩酌)にも合いやすいから」といった理由があると考える。

 パッケージでは黒背景に金のホップをあしらい、上質で落ち着いた印象にした。缶中央には「微アルコール」のアイコンを配置して、新たなカテゴリーとしての提案を訴求。ビール好きに親近感を抱いてほしいという思いから、「BEER」の文字列に似た「BEERY」を商品名にした。

 Bも、顧客の生活様式の変化を念頭に置き、ビール好きに対する新しい選択肢として開発。アルコール度数は0.7%で、顧客の「健康志向」や「酔い過ぎたくない気持ち」に応える。パッケージは薄金で、中央に赤の線を引き「微アルコール」の文字を乗せた。ロゴの上部にはサッポロビールを表すおなじみの星のマークを描いた。

ザ・ドラフティはよりビールに近いイメージ

 Q1の結果を性別・年齢別で見ると、Aは女性50代の90.0%が最も高く、次点は男性60代の86.7%だった。老若男女問わず、幅広い層の支持を獲得していた。Bは、男性30代の43.3%が最も高く、次点は女性20代の36.7%だった。どちらかというと若者人気が高いようだ。

 「パッケージから感じるイメージ」(Q2)では、Aは「高級感がある」が88.0%、「素材が良さそう」が72.3%、「味が良さそう」が71.7%と続く。高級で高品質なイメージだ。

 Bの場合は、「味が物足りなさそう」が72.0%、「親しみを感じる」が64.0%、「普通のビールとの違いが分からない」が57.0%だった。普通のビールに近いイメージで、なじみがあるようだ。

 普通の微アルのビールテイスト飲料が180円だった場合、「Q1で選んだ商品がいくらまでなら買うか?」(Q3)と聞くと、Aが+9.7円、Bが+9.3円と、ほぼ同じだった。

 「どこを見て買いたいと思ったか」(Q4)と聞くと、Aは「全体の色合い」が50.5%、「ホップのグラフィック」が14.3%、「『100%ビール由来原料 麦のうまみとコク』のテキスト」が13.4%だった。

 「ビアリーのパッケージのポイントは2つ。1つは『新しい市場を創造する』という意味で、一目で新しさが分かるようにしたこと。黒背景×ホップのイラストで、今までにない印象を目指した。ホップのイラストも、過度にリアルにしたりデフォルメしたりはせず、繊細な線画で表現した。そうすることでジェンダーレスな印象につなげた。2つ目は、従来のビールユーザーも手に取りたくなるような要素を入れたこと。ロゴなどの情報は横書きでセンターに配置して安心感を持たせ、『100%ビール由来原料 麦のうまみとコク』などのワードを入れることで、ビールファンの心をつかむ要素を取り入れた」(福冨氏)

 一方のBでは「全体の色合い」が30.3%、「ALC.0.7%」の表記が18.4%、「星のグラフィック」が17.1%だった。背景色の金は、ビール定番の人気色でもある。

酒は強くないが楽しみたい人はビアリー

 デザインの良いところ、悪いところを聞いた(Q5)。

 Aで最も多かったのが「高級感がある」というコメントだ。背景色の黒や黒×金の色合い、ロゴやテキストの書体がリッチな印象につながったようだ。「100%ビール由来原料~」のテキストも「成分のこだわりを感じる」(女性20代)、「説明から味が想像できる」(女性40代)と好評だった。

 Bでは、星マークなどサッポロビールらしさが評価された。「サッポロビールの商品だとすぐに分かり、試したくなった」(女性20代)、「星がかわいらしく、色合いに親しみがある」(男性20代)などの意見があった。ビール好きや、サッポロビールのファンからの評価が高い一方で「普通のビールとの差がよく分からない」(女性30代)などの声もあった。

 「微アルコールビールを飲んでみたいと思いますか?」(Q6)と聞くと、「飲んでみたい」が39.4%、「もともとお酒が好きではない」が20.7%、「飲んでみたくない」が16.3%、「分からない」が14.3%、「どちらでもない」が9.3%だった。

 「どんなときに微アルコールビールを飲みたいと思いますか」(Q7)という質問では、「お酒は強くないが、楽しみたいから」が48.3%、「お酒は好きだが、健康が気になるから」が23.7%、「お酒は好きだが、その後に仕事などがあり、あまり酔いたくないから」が15.3%、「お酒は好きだが、別のことに集中しながら飲みたいから」が12.7%だった。

新規カテゴリーの「微アル」をどう訴求するか

福冨 貴之 氏
アサヒビール
マーケティング本部 新価値創造推進部 担当副部長

 大変だったのが、「微アル」という新しい価値の定着、そしてルール作りだった。ビアリーはビールでもノンアルコールビールでもないため、既存のルールが存在しなかった。注意表記はもちろん「スーパーの売り場をどこにするか」などだ。ノンアルコールの売り場に配置すると、妊婦さんなどが誤飲する危険性もあったため、発売時は当社が販売する外国産ビールの「ピルスナーウルケル」などと同様の「こだわりビール売り場」を推奨した。また、アルコールが含まれている旨を強調した店頭ゾーニングPOPを作るなど、誤認を防ぐ取り組みも実施した。

 ルール作りでは社内の多数の部門と何度も協議を重ね、その部門のプロの視点で様々な懸念点を洗い出したうえで、最大限配慮した。一方で、100%リスクをゼロにすることはできないので、「リスクをテークする」ことも含めて、ルールを定めていった。

●調査概要
2021年10月上旬、インターネットを介してアンケートを実施。有効回答数は男性150人、女性150人の合計300人。20代、30代、40代、50代、60代の各世代共男女30人ずつ。
調査協力:クリエイティブサーベイ
https://creativesurvey.com

6
この記事をいいね!する