2010~19年までの10年間で容器入り麦茶市場の成長率は年平均16%増、21年は約1500億円の市場規模になるといわれている(富士経済調べ)。今回は、そんな麦茶市場に新規参入したコカ・コーラの「やかんの麦茶from一(はじめ)」と、麦茶市場で圧倒的なシェアを持つ伊藤園の「健康ミネラルむぎ茶」のパッケージデザインを比較した。
日本コカ・コーラのマーケティング本部麦茶ブランド担当マネジャーの竹井仁美氏は、麦茶市場が成長している理由は3つあると考えている。「1つ目の理由は、10年の記録的な猛暑をきっかけに、熱中症対策として麦茶を飲む人が増えたこと。2つ目は、各飲料メーカーが多様な麦茶ブランドを発売したことで、消費者の選択肢が増えたこと。3つ目は、ペットボトル飲料の増量化が進み、お得感が支持されたこと」(竹井氏)。今後も麦茶市場はますます成長すると考えられる。
「やかんの麦茶from一(はじめ)」(A)は、21年4月に発売。コカ・コーラでは1993年から「茶流彩彩 麦茶」を発売していたが、本格的な参入は今回が初。麦茶に関するかなりの調査を繰り返しており、構想から発売までに3年かかったという。
ラインアップはペットボトルのみだが、600ミリリットル、650ミリリットル、950ミリリットル、2リットルといったサイズ展開。売り上げはかなり好調で、発売から2カ月で出荷本数5000万本を突破したという(2021年6月時点、650ミリリットル換算)。
「やかんで煮出した本格的な麦茶の味わい」を目指しており、素材は大麦100%。昔ながらの砂焙煎(ばいせん)と熱風焙煎という2つの焙煎法で、麦茶らしい香ばしさと甘さを追求した。竹井氏は、同コンセプトが生まれた経緯をこう話す。「麦茶の調査を進めるうちに、麦茶ユーザーには『麦茶たるものシンプルで親しみやすくあってほしい』と考えている人が多いと分かった。麦のブレンドや美容などの機能性にこだわった商品は王道から外れてしまい、あまり受け入れられないようだ」
そうした声に耳を傾けつつ、麦茶の起源を遡っていった。「日本では紀元前1~2世紀から大麦を湯で煮出して飲むという風習があったが、それが庶民にも定着したのは江戸時代だった。今でいう喫茶店のような場所で、やかんで大麦を煮出した『麦湯』を出すようになったのがきっかけだ。『やかんで煮出した麦茶』は、麦茶ユーザーが求める『シンプルで親しみやすい』という価値と、麦茶の原点を同時に表現できるコンセプトだった」(竹井氏)
パッケージは、新しくおしゃれでありながら、どこか懐かしい雰囲気に仕上げた。ラベルにのれんのモチーフを描いたのは、日本の職人の丁寧な仕事ぶりをイメージしてもらうことで、「一手間かけた」味わいを伝えたかったから。のれんは爽やかな浅葱(あさぎ)色で、麻のような質感を入れている。右下にはイラスト調のやかんのグラフィックを入れた。
「健康ミネラルむぎ茶」(B)は伊藤園が販売。12年2月に「天然ミネラル麦茶」から名称を変更したロングセラー商品だ。幅広い世代を対象にしており、やかんで煮出したような甘くて香ばしく、すっきりとした味わいが特徴。適度な水分とミネラルを補給できるため、スポーツ時や暑さ対策にも適している。サイズ展開も豊富で、ペットボトルは280ミリリットル、350ミリリットル、600ミリリットル、650ミリリットル、670ミリリットル、1リットル、2リットルの7種類がある。希釈缶や紙パック、ティーバッグや粉末タイプも販売しており、幅広い飲用シーンを想定した。
パッケージでは氷が入った麦茶のグラフィックを大きく表示。背景は青空のような青色で、中央には「健康ミネラルむぎ茶」のロゴを大きく配置した。
持ち運びたいA、自宅で飲みたいB
AとBのパッケージを比較して「どちらの商品を買いたいか」(Q1)を聞いた。
この記事は会員限定(無料)です。
- ①2000以上の先進事例を探せるデータベース
- ②未来の出来事を把握し消費を予測「未来消費カレンダー」
- ③日経トレンディ、日経デザイン最新号もデジタルで読める
- ④スキルアップに役立つ最新動画セミナー