今回の調査対象は、飲料業界で注目度が増しているペットボトルのほうじ茶。キリンビバレッジの「キリン 生茶 ほうじ煎茶」(A)と、サントリー食品インターナショナルのサントリー緑茶「伊右衛門 焙じ茶〈秋の味わい〉」(B)を取り上げ、どちらのパッケージデザインが魅力的かを聞いた。

A:キリン 生茶 ほうじ煎茶、B:サントリー 伊右衛門 焙じ茶〈秋の味わい〉
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 どちらも緑茶の有名ブランドから発売しているほうじ茶商品だ。飲料業界は無糖茶飲料の注目市場として、ほうじ茶飲料に着目しており、各社から相次ぎ登場している。

 まずAとBの「どちらの商品を買いたいか」(Q1)と聞くと、全体ではAが44.0%、Bが56.0%だった。

Q1:パッケージで選ぶならどれを購入したい?
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 Aはキリンビバレッジが2020年9月に発売。19年にほうじ茶の市場が急拡大したため、ペットボトルのほうじ茶市場にも成長期が来ると考え、生茶ブランドならではのほうじ茶を発売しようと考えた。発売から3週間で販売数2000万本を突破。生茶ブランド全体でも20年9月の販売数が、前年比で約3割増と好調に推移しているという。

 ボトルは緑茶の生茶と同様、ガラスの瓶を思わせるような形状で、すっきりとした印象だ。ラベルはオレンジのグラデーションで、中心に生茶のロゴを描いた。「ほうじ煎茶」という言葉は、ほうじ茶と煎茶を掛け合わせることで生まれた。生茶の新規ユーザーにも手に取ってもらえるよう、本格感と現代性を両立したデザインにしたという。

 Bはサントリー食品インターナショナルが06年から販売。緑茶である伊右衛門ブランドのほうじ茶シリーズとして季節ごとに味わいやパッケージを変え、季節限定で市場に投入していた。それが好評だったため20年4月にリニューアルし、通年商品として展開した。味わいやパッケージはこれまでと同様、季節ごとに変更。Bは20年秋季限定のデザインだ。

 緑茶の伊右衛門も20年4月にリニューアル。ペットボトルを処分する際のラベルを剥がす手間が面倒という声に対応したサントリー緑茶「伊右衛門ラベルレス 600mlペットボトル」は「日本パッケージデザイン大賞2021」の大賞を受賞。20年の6~8月の販売推移も、前年比約5割増で好評だという(数字は出荷ベース、緑茶のみ)。

 Bをほうじ茶の新ブランドではなく緑茶の伊右衛門ブランドから発売した理由は、伊右衛門ブランドの持つ上質さや情緒的価値をほうじ茶のシリーズでも感じてほしかったから。ボトルは緑茶の伊右衛門と同様に、角丸の四角形にした。ラベルのグラフィックには、京都市にある京友禅の老舗「千總(ちそう)」のデザイナーによる伝統的な和柄を採用。濃紺の背景に紅葉や金雲をデザインし、華やかで心が躍るような秋の情感を表現した。

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