新型コロナウイルスの感染症拡大は人々の意識に大きな影響を及ぼした。これからのパッケージデザインには、どのようなものが求められるだろうか。パッケージデザイン開発とマーケティングリサーチを手掛けるプラグが過去5年間に実施したパッケージデザインに関する好意度調査から傾向を分析した。
新型コロナウイルスについての報道が出始めた頃、人々の生活や経済活動にここまで大きな影響を与えるとは予想できなかった。2020年4~6月のGDP成長率は、データを遡れる1955年以降で最大の落ち込みになるとの見方もある。外出自粛と在宅勤務によって、外食産業や観光業は大打撃を受けた。
今後、第2波(あるいは第3波)が来るという専門家もいる中で、見通しが立たない状況が続くだろう。危機を脱した後も元通りにはなりそうにない。私たちは、日々の生活や働き方に一定の制約が求められる新常態(ニューノーマル)に適応していかなければならない。
変わらぬデザインに安心感抱く
このような社会的に大きな事象が起こると、生活者の意識は変化する。東日本大震災のときも人々は、家族との時間や絆の大切さ、地域社会への貢献や環境に配慮することの大切さを学び、日々の行動を変えて苦しい時期を乗り切った。
今回も恐らくこれに近い変化が起こるだろう。ただ、新型コロナウイルスが東日本大震災と決定的に異なる点は、ほぼ「全員が当事者」ということだ。アフターコロナの意識・行動の変化は、すでに全国で同時に大規模に起きていると考えられる。
日本経済の立て直しや業界単位の救済策は政府に期待するところも大きいが、生活者の心の機微を察し、生活者が求める商品、生活者に配慮した商品を提供していくことはメーカーの役割である。
では、アフターコロナでのパッケージデザインには、どのようなものが求められるだろうか。デザインには、社会的背景の変化により現れるトレンドがある。東日本大震災の後には、人々は安心や安全を求め、ノスタルジックなものに安堵する保守的な消費行動が見られた。それを反映して、パッケージでは、定番のデザインや、復刻版のデザインが一定の支持を得た。
今回もこれとよく似た意識の変化が起きると思われる。安心感を得られるデザイン、懐かしさを感じられるデザインは一定の支持を得そうだ。また、長期間にわたる外出自粛によって軟禁状態に近い生活を送る人々にとっては、憂さ晴らしをしたい気持ちも強いだろう。気分が晴れるようなデザインや、楽しさを感じるデザインにもニーズがあると考えられる。
では消費者は、どのようなパッケージデザインに安心・安全を感じるのか。プラグが過去5年間にわたり実施してきたパッケージデザインに関する10回分の好意度調査から傾向を分析してみたい。
調査対象となるデザインは毎回、ビール、炭酸飲料、調味料、菓子、アイス、医薬品、ペットフードなど20以上のカテゴリーから選定しており、累計で約5200商品を調査した。20~50代の消費者がパッケージデザインの画像を見て、好きかどうかを5段階で評価し、好意度の理由を自由回答で記入する。今回は自由回答に「安心」「安全」「安堵」「懐かしい」「落ち着く」といった単語が多く使われたパッケージから上位10商品を抜粋した。
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