春の訪れが近づくにつれて、スーパーやコンビニに「春限定」をうたう商品が並び始める。桜やピンクの華やかなデザインに引かれ、つい手に取ってしまう人も多いだろう。今回はこの春に季節限定で発売されたビールの缶を検証した。
今回の調査対象は、「一番搾り 限定春デザイン缶」(A)と、アサヒビール「アサヒスーパードライ スペシャルパッケージ」(B)。どちらも春らしいパッケージだ(中身は通常品と同じ)。
Aは、「一番搾り」シリーズの商品で2020年2月18日に発売。キリンビールのビール類の販売数は2年連続で増加。19年の一番搾りシリーズの販売実績は前年度比3.0%増の1370万ケース(1ケースは大瓶633ミリリットル×20本)。これと比例するように、限定春デザイン缶も順調に売り上げを伸ばしている。同社は、春限定デザイン缶の商品を16年から毎年販売している。
Aのメインターゲットは通常品と同様の40~50代だが、女性20~30代も視野に入れている。特別なパッケージを投入し、普段はビールを飲まない若年女性にも訴求する狙いがある。
パッケージは通常の一番搾りと同様、キリングループのシンボルである「聖獣麒麟」とロゴを配置。パッケージの上下には桜のグラフィックをあしらい、春らしさを表現している。左上には「限定春デザイン」と書いたピンクのラベルを表示。一番搾りユーザーが店頭で迷わないようにした。背景は、通常品と同様、商品の品質を感じさせるようなうっすら光るアイボリーにしている。
Bは、「アサヒスーパードライ」シリーズの商品で、20年2月12日に発売。瓶タイプもあり、こちらは2月14日と3月13日の2回に分けて完全予約受注制で販売した。
同シリーズでは、15年から春限定デザイン缶の商品を販売しており、若年層や女性を中心に人気を広げている。第1弾発売以降、累計333万ケースを販売した(20年1月アサヒビール調べ)。
Bでは、若年層のビール需要を拡大するための広告活動を展開。テレビCMやウェブ動画で、女性グループが桜の下でBを飲むシーンを描き、お花見シーズンの特別な飲用体験を訴求した。パッケージでは、地色に女性が好みそうな鮮やかなピンクを使っている。ロゴなどの文字要素はシルバーに統一しており、すっきりとした印象を与える。左上の「春限定スペシャルパッケージ」を示す黄色の帯がアクセントとなっている。パッケージの上下には桜のグラフィックを配置して季節感を演出した。
デザインでは一番搾りらしさを優先
今年はコロナウイルスの広がりで春のお花見をできなかった人も多いと思うが、2社の春限定パッケージは、デザインの視点からすると、どちらに軍配が上がったのか……。
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