前回に続き柔軟剤入り洗剤「ニュービーズ」と「ボールド」のパッケージデザインに対する印象をアンケートで調査を紹介。多くの支持を得た「ニュービーズ」のボタニカルデザインは、花王が総力を結集し、ターゲットの価値観の変化に応えた結果だった。
デザインの良いところ、悪いところを聞いた(Q5)。Aでは、ボタニカルに関連したコメントが多い。「植物がボタニカルということを感じさせてくれる」(女性60代)など、花や葉のイメージがボタニカルというフレーズを連想させることが分かる。「商品の香りが、パッケージ全体にデザインされているようで、パッと見で分かりやすい」(女性20代)、「草花があって、自然由来のいい香りがしそう」(女性20代)など、花や葉のグラフィックから、具体的な香りをイメージした人も多い。
新デザインに花王の総合力を結集
Aの植物のグラフィックは、よい印象を与えることに成功している。「花や草のグラフィックは、上質な紙の上に、1本ずつ花を並べるようなイメージで描き、繊細でみずみずしい香りを表現した。ほのかな影によって、自然の光や温度、心地いい空気感を演出した」と花王ファブリックケア事業部の井上直子氏は説明する。
一方のBでは、ボトルのハンドルに対して「持ちやすそう」という意見が多かった。しゃぼん玉のグラフィックには「清潔感を感じる」(女性20代)や「洗浄力の高さを感じさせる」(男性30代)、「洗濯が楽しくなりそう」(女性20代)という意見があった。Aとは違う視点から、清潔感と洗浄力をアピールしていることが分かる。
以前のフレグランスニュービーズジェルのパッケージデザインでは、ブルーを背景に、花のグラフィックを大きく描き、豪華で華やかな印象だった。一方、Aは、ボタニカルの印象を打ち出したナチュラル路線。花王はニュービーズのブランド戦略を転換したようにも見える。
「Aは、花王のパッケージ作成部だけでなく、関係部門の総合力で生まれたデザイン。社内の調査で判明したターゲットの暮らしの価値観の変化に応えるため、ブランド価値の一つとしてボタニカルの印象を提案した」(井上氏)。
Aのデザインで、こだわった点は3つあるという。
「1つは、暮らしの手づくり感。洗剤を選ぶという従来の視点に加えて、どういう気分で洗濯をするのか、暮らしを彩るためにどのようなものを選ぶのかという、ターゲットの暮らしの美意識の感度に合わせる努力をした。2つめは、ターゲットが感じる自分ならではの心地よさ。洗い上がった服を着て、居心地のよい時間を過ごす。そんなイメージを、デザインを通して共有したいと考えた。そして3つめは、暮らしをつむぐ時間。現代は、共働きの家庭も増え、仕事や家事、育児などの両立で、忙しい日々を過ごす人が多い。デジタル社会に疲れた人もいる。そんな生活の中で、丁寧に描かれたペン画のイラストや、刺しゅうで表現したロゴを見て、ほっと一息ついてほしい」と井上氏は説明する。
子供の世話や親の介護などで1分1秒を争うように生活している人や、疲れて帰宅し、洗濯をおっくうに感じている人が、時短を可能にする柔軟剤入り洗剤を購入する。こうした忙しい消費者が、暮らしの彩りややすらぎを感じて、ボタニカルデザインを支持していると言えそうだ。
最後に、「あなたは、柔軟剤入りの洗濯用洗剤を使用していますか?」(Q6)という質問をしたところ、「使用している」が41.0%、「使用していない」が59.0%だった。「あなたは、用途によって洗濯用洗剤の使い分けをしていますか?」(Q7)では、「している」が49.3%、「していない」が50.7%だった。
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