パッケージデザイン開発とマーケティングリサーチを手掛けるプラグは、2018年8~10月に発売された商品のパッケージデザインについて好意度を調査した。前編では「高級感」から「濃厚さへ」というデザイントレンドをお伝えした。後編では、スープ類のパッケージデザインに焦点を当て、一強の「クノール」を他ブランドが追い上げる構図を分析する。

図1●スープカテゴリー 企業別パッケージデザインの平均好意度と標準偏差
図1●スープカテゴリー 企業別パッケージデザインの平均好意度と標準偏差

 パッケージデザイン開発とマーケティングリサーチを手掛けるプラグは、2018年8~10月に発売された564商品のパッケージデザインに関する好意度調査を実施した。20~50代の消費者3万人がパッケージデザインの画像を見て、好きかどうかを5段階で評価。そのうち「好き」「やや好き」と回答した割合の合計を好意度とした。

下位企業がデザインを底上げ

 スープ類のパッケージデザインを個別に見ていくと、シェア下位の企業が販売する商品のデザイン評価が底上げされていることが分かる。

 図1は、スープ類の好意度を主要なスープメーカーごとに集計し、横軸をデザイン好意度の平均値、縦軸をデザイン好意度の標準偏差(データのばらつきを表す指標)とした座標にプロットしたもの。座標の右側にあるほどデザイン評価の平均値が高く、上にあるほど商品ごとのデザイン評価のばらつきが少ないことを示している。

 日本食糧新聞によると、スープ市場のメーカーシェアは「クノール」ブランドを有する味の素が4割以上を占める一強で、2位はポッカサッポルフード&ビバレッジ(以下、ポッカ)だが、シェアは1割足らずにとどまる。図1を見ると、右上に位置する味の素は、好意度が58.0%、標準偏差が5.6。この数字は、同社が、安定して高いクオリティーのパッケージデザインを開発できる体制を整えていることを示している。

 ただ、16年春からの過去6回の調査での同社の平均好意度の推移を見ると、やや右肩下がりだった。一方でそれ以外の4社は、上下はあるものの右肩上がりとなっている。つまり、シェアで下位のメーカーがデザイン開発力を高め、消費者から評価されるようになったことを意味している。これによって、スープ類全体の好意度が高まったと言える。

 スープ類の好意度の上昇の背景には、各メーカーが、多様化するニーズに対応し、さまざまなコンセプトの商品とそれを表現したパッケージデザインを開発したことがある。

 図2は、これまでの市場に見られるスープ類の商品コンセプトを4つに分け、その代表例としてパッケージデザイン評価が上位の商品を挙げたものだ。15~16年は、シェアで上位の味の素とポッカの商品が、食事代わりと高級路線という観点で評価されていた。17年以降になると、野菜の豊富さや健康を訴求した新しいコンセプトの商品の評価が高まっている。さらに、食事代わりになり、同時に高級感もあるハイブリッド商品も登場している。

図2●スープ分野に見られる4つの方向性
図2●スープ分野に見られる4つの方向性

 味の素は、先述の通り、クノールのブランドアイデンティティーを確立し、シリーズ商品のパッケージデザインをマネジメントすることに成功。その結果、高評価を維持している。

 同時に、新しいトレンドにも素早く対応してきた。例えば、18年春に顕著だった「健康×おいしさ」というデザイントレンドに対しては、味の素が「クノール たっぷり野菜で満たされたいときのスープごはん用 まろやかコンソメ」など健康に良いイメージを訴求する商品を投入した。

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